
在留資格「経営・管理」、いわゆる経営管理ビザの申請では、売上計画や利益計画だけでなく、「事業を継続するためのお金が足りるのか」という資金繰りの視点も重要です。
在留資格「経営・管理」の申請手続きや必要書類については、出入国在留管理庁の在留資格「経営・管理」ページもあわせて確認しておくとよいでしょう。
事業計画書では、売上高や利益を予測する損益計画を作成することがあります。
しかし、利益が出ている計画であっても、実際のお金が不足してしまうことはあります。
たとえば、商品を仕入れてから代金を回収するまでに数か月かかる場合や、店舗開業前に多額の内装工事費や設備費を支払う場合には、売上が発生する前から資金が出ていきます。
そのため、経営管理ビザの事業計画書では、「将来黒字になるか」だけではなく、開業準備から事業が軌道に乗るまでの資金をどのように確保するのかを整理することが重要です。
また、現在の経営管理ビザの基準では、事業に供される財産について3,000万円以上の基準が設けられています。
経営管理ビザの新基準や資本金等3,000万円の考え方については、出入国在留管理庁の「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」も確認しておくとよいでしょう。
ただし、3,000万円という金額だけを事業計画書に記載すればよいわけではありません。
その資金を何に使うのか、開業時にいくら必要なのか、毎月いくら資金が出ていくのか、売上代金はいつ入ってくるのかなど、事業内容と資金計画を結びつけて説明することが大切です。
本記事では、経営管理ビザ申請で資金繰り計画が重要な理由と、資本金等3,000万円との関係、事業計画書で整理しておきたいポイントについて、中小企業診断士・行政書士の視点から解説します。
資金繰りとは何か
資金繰りとは、簡単にいえば「会社にいつ、いくらのお金が入り、いつ、いくらのお金が出ていくのか」を管理することです。
会社の事業活動では、売上と入金、費用と支払いのタイミングが必ずしも一致しません。
たとえば、商品を100万円で販売したとしても、その100万円がすぐに銀行口座へ入金されるとは限りません。
取引条件が「月末締め翌月末払い」であれば、売上が発生してから実際に代金を受け取るまで時間がかかります。
一方、商品の仕入代金、従業員給与、家賃などは、その前に支払わなければならないことがあります。
この時間差によって、損益計算上は利益が出ていても、会社のお金が不足することがあります。
そこで重要になるのが資金繰りです。
経営管理ビザの事業計画書でも、
・事業開始時にいくら必要なのか
・毎月どの程度の支出が発生するのか
・売上代金はいつ入金されるのか
・事業が軌道に乗るまでの資金を確保できているか
といった点を確認しておくことが大切です。
利益が出ていても資金不足になることがある
事業計画を作るときに注意したいのが、「利益」と「現金」は同じではないという点です。
たとえば、年間売上3,000万円、年間経費2,500万円であれば、計算上は500万円の利益が出ます。
しかし、売上代金の回収が遅く、仕入代金や人件費の支払いが先行すれば、途中で資金が不足する可能性があります。
特に次のような事業では、資金繰りへの注意が必要です。
・商品を仕入れて販売する事業
・在庫を多く保有する事業
・海外との取引を行う貿易業
・中古車輸出業
・店舗の内装工事が必要な飲食業
・高額な設備投資を行う事業
・売上代金の回収サイトが長いBtoB事業
・開業後しばらく集客期間が必要な事業
事業計画書では、損益計算書だけを作って安心するのではなく、実際のお金の動きも確認する必要があります。
経営管理ビザ申請で資金繰り計画が重要な理由
1. 事業を継続できるかを確認するため
経営管理ビザは、日本で継続的に事業の経営または管理を行うことを前提とする在留資格です。
そのため、事業を始められるかだけではなく、事業開始後も継続できる計画になっているかが重要です。
たとえば、開業時の設備投資に資金の大部分を使ってしまい、その後の家賃や給与を支払う資金がほとんど残らない計画では、事業継続に不安が残ります。
資金計画では、初期投資だけではなく、開業後の運転資金も考える必要があります。
2. 資本金等3,000万円の使い道を具体化するため
経営管理ビザの新基準では、事業に供される財産について3,000万円以上という基準が設けられています。
事業計画書を作る際には、この資金を実際の事業にどのように活用するのかを整理することが重要です。
たとえば、飲食店であれば、
・物件取得費
・保証金・敷金
・内装工事費
・厨房設備
・家具・備品
・広告宣伝費
・仕入資金
・人件費
・家賃
・運転資金
などが考えられます。
貿易業であれば、
・商品仕入資金
・在庫資金
・倉庫費用
・輸送費
・通関費用
・Webサイト制作費
・広告宣伝費
・人件費
・事務所家賃
・運転資金
などが考えられます。
重要なのは、「3,000万円ある」という説明だけで終わらせるのではなく、事業内容と資金の使い道を結びつけることです。
3. 売上が安定するまでの期間を乗り切れるか確認するため
新規事業では、開業初月から計画どおりの売上が発生するとは限りません。
店舗ビジネスであれば、認知度が高まるまで時間がかかることがあります。
EC事業であれば、Webサイトを開設してからアクセスを集め、購入につなげるまで一定の期間が必要です。
BtoB事業では、営業を開始してから商談、見積り、契約、納品、入金まで数か月かかることもあります。
そのため、初年度の資金計画では、売上が十分に立たない期間も想定しておく必要があります。
4. 常勤職員の給与を継続して支払えるか確認するため
新基準では常勤職員に関する要件も設けられています。
常勤職員を雇用すれば、給与だけでなく、会社負担分の社会保険料なども発生します。
たとえば、月額給与30万円の職員を雇用する場合、単純に年間360万円を見込めばよいわけではありません。
会社負担分の社会保険料や採用費、交通費なども考慮する必要があります。
事業計画書では、売上計画、人員計画、人件費、資金繰りを一体として考えることが重要です。
資本金3,000万円は「初期投資」と「運転資金」に分けて考える
資金計画を作る際には、資金の使い道を大きく「初期投資」と「運転資金」に分けて考えると整理しやすくなります。
初期投資
事業開始前後に一度に発生する支出です。
たとえば、
・物件取得費
・敷金・保証金
・内装工事費
・機械設備
・厨房機器
・家具・備品
・パソコン
・車両
・Webサイト制作費
・許認可取得費用
などがあります。
運転資金
事業を継続するために日常的に必要となる資金です。
たとえば、
・仕入費用
・従業員給与
・役員報酬
・社会保険料
・家賃
・水道光熱費
・広告宣伝費
・通信費
・外注費
・輸送費
・税金
などです。
事業計画書では、3,000万円のうちどの程度を初期投資に充て、どの程度を運転資金として確保するのかを整理しておくと、事業開始後の資金繰りを説明しやすくなります。
業種別に見る資金繰り計画のポイント
飲食店の場合
飲食店では、開業前の支出が大きくなりやすい傾向があります。
主な支出として、
・保証金・敷金
・仲介手数料
・内装工事費
・厨房設備
・什器・備品
・食材仕入れ
・採用費
・広告宣伝費
などがあります。
さらに開業後は、
・食材費
・給与
・社会保険料
・家賃
・水道光熱費
・広告費
などが継続的に発生します。
開業時に初期投資をかけすぎて、運転資金が不足しないよう注意が必要です。
貿易業・中古車輸出業の場合
貿易業では、商品の仕入れから代金回収までの資金の流れが重要です。
特に中古車輸出業では、
・車両購入代金
・オークション費用
・陸送費
・保管費
・船積み費用
・輸出関連費用
などが販売代金の回収より先に発生することがあります。
取引件数が増えるほど必要な仕入資金も増えます。
そのため、売上が増える計画を作る場合には、それに伴って必要となる運転資金も増えることを考慮する必要があります。
EC事業の場合
EC事業では、
・商品仕入れ
・在庫
・Webサイト
・ECモール手数料
・広告宣伝費
・発送費
・倉庫費
などが発生します。
特に注意したいのが在庫です。
大量に仕入れれば商品在庫は増えますが、その分だけ現金は減ります。
商品が売れるまで在庫として資金が固定されるため、売上計画と在庫計画を連動させる必要があります。
コンサルティング業の場合
コンサルティング業は、在庫や設備投資が少ないため、比較的資金負担が小さい事業に見えます。
しかし、
・役員報酬
・従業員給与
・事務所家賃
・広告宣伝費
・営業費
・外注費
などは継続して発生します。
また、法人向けサービスでは請求から入金まで1〜2か月程度かかる場合もあります。
契約を獲得できても、実際の入金までの資金を確保しておくことが重要です。
資金繰り計画で確認したい5つのポイント
1. 開業までにいくら必要か
最初に、事業を開始するまでに必要となる支出を洗い出します。
見積書があるものについては、可能な限り実際の金額を使います。
たとえば、内装工事や設備について「500万円程度」と推測するより、実際の見積書をもとに計画した方が具体性が高まります。
2. 毎月いくら固定費が発生するか
次に、売上の有無にかかわらず毎月発生する費用を整理します。
代表的なものは、
・役員報酬
・従業員給与
・社会保険料
・家賃
・通信費
・リース料
・顧問料
などです。
固定費が高いほど、売上が安定するまでに必要な運転資金も大きくなります。
3. 売上代金がいつ入金されるか
売上計画では、売上が発生する時期だけではなく、実際に入金される時期も確認します。
現金商売の飲食店と、翌月末払いのBtoB取引では、同じ月商300万円でも資金繰りは大きく異なります。
4. 売上が計画を下回った場合も資金が持つか
事業計画は将来予測なので、必ずそのとおりになるとは限りません。
特に創業直後は、顧客獲得が計画より遅れる可能性があります。
売上が計画の70%程度だった場合でも、一定期間事業を継続できるかを確認しておくと、より現実的な計画になります。
5. 資金不足が生じる場合の対応方法があるか
資金繰りを確認した結果、途中で資金不足になることが分かった場合には、計画を見直す必要があります。
たとえば、
・初期投資を抑える
・設備購入時期をずらす
・在庫量を見直す
・広告投資を段階的に行う
・売上回収条件を見直す
・追加の自己資金を確保する
・金融機関からの借入を検討する
といった方法が考えられます。
重要なのは、資金不足を隠すことではなく、事前に把握して現実的な計画に修正することです。
資金繰り計画の根拠として準備しておきたい資料
資金計画を作る際には、可能な限り実際の資料を使います。
たとえば、
・物件の賃貸借契約書
・敷金・保証金の資料
・内装工事見積書
・設備見積書
・商品仕入れ見積書
・従業員の給与予定額
・広告宣伝費の見積り
・Webサイト制作費
・許認可関連費用
・借入金の返済予定表
・資本金の払込を確認できる資料
などが考えられます。
これらを事業計画書の数値と整合させることで、資金計画の具体性を高めることができます。
「資本金3,000万円あるから大丈夫」とは限らない
経営管理ビザ申請では、3,000万円という金額そのものに意識が向きがちです。
しかし、事業計画を作る立場から見ると、本当に重要なのは、その資金によって事業が立ち上がり、継続できるかどうかです。
たとえば、3,000万円を準備していても、
・店舗取得・内装工事だけで大部分を使う
・仕入資金を考えていない
・従業員給与を十分に見込んでいない
・開業後の広告費を考えていない
・売上入金までの期間を考えていない
という状態では、事業開始後に資金不足になる可能性があります。
逆に、初期投資、運転資金、売上の入金時期を整理し、一定の資金余力を確保した計画であれば、事業の継続性を説明しやすくなります。
資本金等3,000万円という要件と、事業計画書における資金計画は、切り離して考えるのではなく、セットで整理することが重要です。
中小企業診断士・行政書士に依頼するメリット
経営管理ビザの事業計画書では、売上計画だけでなく、経費計画、設備投資、人員計画、資金繰りまで整合させる必要があります。
数字を並べるだけであれば事業計画書を作ることはできます。
しかし、
「この設備投資を行った後に、運転資金はいくら残るのか」
「常勤職員を雇用した場合、毎月いくら資金が減るのか」
「売上代金が入金されるまで会社の資金は持つのか」
といった点まで確認するには、財務面から事業計画を見る必要があります。
中小企業診断士は、事業計画、収支計画、資金繰り、事業の実現可能性を整理する専門家です。
行政書士は、在留資格申請や許認可手続きに関する実務を扱う専門家です。
当事務所では、中小企業診断士・行政書士として双方の視点から、入管提出を前提とした事業計画書を作成します。
当事務所で対応できること
当事務所では、経営管理ビザ申請における事業計画書の作成、事業計画評価書の作成、専門家確認に対応しています。
特に、次のような場合には資金計画の整理が重要になります。
・資本金等3,000万円をどのように事業計画に反映すればよいか分からない
・店舗開業に多額の初期投資が必要になる
・設備投資後の運転資金に不安がある
・仕入れから売上代金の回収まで時間がかかる
・常勤職員の人件費をどのように計画すればよいか分からない
・売上・利益計画はあるが資金繰りを作成していない
・事業計画書の数字に整合性があるか確認したい
単に文章を作成するのではなく、売上計画、経費計画、初期投資、人員計画、資金繰りを一体として整理します。
また、行政書士の先生方からの、事業計画書や評価書部分のみのご依頼にも対応しています。
原則として、申請者様との直接連絡は必要最小限とし、先生方の業務領域や顧客関係を尊重して対応します。
ご依頼の流れ
1. お問い合わせ
まずはお問い合わせフォームよりご相談ください。
申請の種類、事業内容、現在の準備状況、在留期限、行政書士の先生が関与しているかどうかなどを確認します。
2. 必要資料の確認
会社概要、事業内容、資本金の状況、申請人本人の経歴、事務所・店舗、設備投資、売上計画、経費計画などを確認します。
必要に応じて、内装工事や設備の見積書、賃貸借契約書、仕入関係資料なども確認します。
3. お見積り・ご依頼
業務範囲を確認したうえで、報酬額と対応内容をご案内します。
内容に問題がなければ、正式にご依頼いただきます。
4. ヒアリング・財務計画の整理
メール、オンライン面談、電話などで必要事項を確認します。
売上計画、経費計画、初期投資、資本金の使途、運転資金、人員計画などを整理します。
5. 事業計画書・評価書の作成
ヒアリング内容と資料をもとに、入管提出を前提とした事業計画書を作成します。
必要に応じて、事業計画評価書や専門家確認に関する書類も作成します。
6. 内容確認・修正
作成した書類をご確認いただき、必要に応じて修正します。
行政書士の先生が申請を担当されている場合には、申請方針も踏まえて調整します。
7. 納品
最終版の事業計画書・評価書を納品します。
料金の目安
経営管理ビザ申請に関する事業計画書・評価書作成の料金目安は、以下のとおりです。
・事業計画書の作成:100,000円(税別)
・事業計画評価書の作成:50,000円(税別)
事業計画書と事業計画評価書をあわせてご依頼いただく場合は、内容や業務範囲に応じて個別にお見積りいたします。
また、行政書士の先生方からの部分依頼にも対応しています。
事業内容が複雑な場合、複数店舗・複数事業を含む場合、追加資料対応や不許可後の再申請に関する見直しが必要な場合には、別途お見積りとなることがあります。
正式な報酬額については、ご相談内容と必要書類の状況を確認したうえでご案内します。
まとめ
経営管理ビザ申請の事業計画書では、売上や利益だけでなく、実際のお金の流れを確認することが重要です。
特に、新基準における資本金等3,000万円については、金額を準備することだけに目を向けるのではなく、その資金をどのように事業へ投入し、事業が軌道に乗るまでどの程度の運転資金を確保するのかを考える必要があります。
資金計画を作る際には、
・初期投資
・毎月の固定費
・仕入れ等の変動費
・売上代金の入金時期
・常勤職員の人件費
・事業が軌道に乗るまでの運転資金
を整理することが重要です。
売上計画、経費計画、人員計画、資金繰り計画を一体として考えることで、より具体的で実現可能性のある事業計画書につながります。
経営管理ビザ申請における事業計画書の作成、資金計画の整理、事業計画評価書、専門家確認でお困りの場合は、中小企業診断士・行政書士の視点からサポートいたします。
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