
在留資格「経営・管理」、いわゆる経営管理ビザの申請では、事業計画書が非常に重要な資料になります。
経営管理ビザは、日本で会社を設立すれば当然に認められるものではありません。
申請人本人が日本で実際に事業の経営または管理に従事すること、事業に実体があること、そして将来にわたって継続できる見込みがあることを、書類上で具体的に説明する必要があります。
出入国在留管理庁の在留資格「経営・管理」ページでも、提出資料として「経営・管理に関する専門的な知識を有する者による評価を受けた事業計画書の写し」が示されています。
その中心となる資料が、事業計画書です。
特に近年は、経営管理ビザの審査において、事業内容、資金計画、人員体制、売上根拠、事業の継続性などがより具体的に確認される傾向にあります。
また、新基準では、資本金等3,000万円以上、常勤職員1名以上、日本語能力、経営経験・学歴、事業計画書の専門家確認など、事業計画書で整理すべき事項が増えています。
出入国在留管理庁の「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」では、事業計画書について、具体性・合理性・実現可能性を評価するものとして、経営に関する専門的な知識を有する者による確認が義務付けられる旨が示されています。
そのため、経営管理ビザの事業計画書は、単にインターネット上のテンプレートに沿って作ればよい資料ではありません。
自分で作成すること自体は可能ですが、入管提出を前提にした事業計画書として十分な内容になっているかどうかは、別の問題です。
本記事では、経営管理ビザの事業計画書作成を専門家に依頼するメリットと、自作した場合との違いについて、中小企業診断士・行政書士の視点から解説します。
経営管理ビザの事業計画書は「きれいな資料」では足りない
事業計画書というと、事業概要、商品・サービス、売上計画、収支計画などをまとめた資料をイメージされる方が多いと思います。
もちろん、見やすく整理された資料であることは大切です。
しかし、経営管理ビザの事業計画書では、見た目が整っているだけでは足りません。
重要なのは、その事業計画書を読んだときに、次の点が具体的に伝わることです。
・申請人が日本でどのような事業を行うのか
・その事業に実体があるのか
・申請人本人が実際に経営または管理を行うのか
・資本金等をどのように事業に使うのか
・常勤職員を雇用する体制があるのか
・売上計画に根拠があるのか
・経費計画は現実的か
・資金繰りは成り立つのか
・日本で事業を継続できる見込みがあるのか
これらは、単に文章をきれいに書けば説明できるものではありません。
事業内容、売上計画、経費計画、資金繰り、人員計画、申請人本人の経歴、事業所、取引先、許認可などを一体として整理する必要があります。
つまり、経営管理ビザの事業計画書は、見栄えの良い資料ではなく、事業の具体性・合理性・実現可能性を説明するための資料です。
自作した事業計画書でよくある問題点
経営管理ビザの事業計画書を自作する場合、よくある問題は、項目自体は埋まっているものの、内容に具体性や整合性が不足していることです。
たとえば、次のようなケースです。
・事業内容が抽象的で、何をする会社か分かりにくい
・売上計画の根拠が書かれていない
・経費計画に人件費や社会保険料が反映されていない
・資本金の使い道が不明確
・資金繰りの説明がない
・常勤職員の業務内容が曖昧
・申請人本人の経歴と事業内容のつながりが弱い
・事業所や設備の説明が不足している
・必要な許認可に触れていない
・文章と数字に矛盾がある
・将来計画が楽観的すぎる
・裏付け資料との整合性が取れていない
自作の場合、本人としては十分に説明したつもりでも、第三者から見ると「なぜその売上が見込めるのか」「なぜその事業を継続できるのか」「その人が経営する合理性はどこにあるのか」が伝わらないことがあります。
また、経営者本人は事業への思いが強いため、どうしても将来計画が前向きになりやすい傾向があります。
しかし、入管提出を前提とした事業計画書では、希望や意欲だけではなく、客観的な根拠が必要です。
テンプレートを使えば作れる、とは限らない
インターネット上には、事業計画書のテンプレートが多くあります。
テンプレートを使えば、事業概要、商品・サービス、売上計画、経費計画、資金計画などの項目を埋めることはできます。
しかし、経営管理ビザの事業計画書では、テンプレートを埋めるだけでは不十分なことがあります。
なぜなら、入管で確認されるのは「項目が埋まっているか」ではなく、「日本で行う事業として具体性・合理性・実現可能性があるか」だからです。
たとえば、飲食店であれば、席数、客単価、回転数、営業日数、家賃、人件費、食材原価、広告方法などを踏まえて売上や利益を説明する必要があります。
貿易業であれば、仕入先、販売先、輸出入の流れ、在庫、決済条件、為替リスク、販売ルートなどを整理する必要があります。
EC事業であれば、商品単価、販売チャネル、広告費、アクセス数、購入率、在庫管理、発送体制などが重要になります。
同じ「事業計画書」でも、業種や事業モデルによって、見るべきポイントは大きく異なります。
そのため、テンプレートを使って形式を整えるだけでは、経営管理ビザの申請に必要な説明としては弱くなることがあります。
専門家に依頼するメリット1:事業内容を具体化できる
専門家に事業計画書作成を依頼するメリットの一つは、事業内容を具体化できることです。
申請人本人にとっては当然のことでも、書類上では十分に説明されていないことがよくあります。
たとえば、「中古車の輸出業」といっても、具体的には次のような点を整理する必要があります。
・どのような中古車を扱うのか
・どこから仕入れるのか
・どの国や地域に販売するのか
・販売先は法人か個人か
・どのように集客するのか
・輸送や通関はどのように行うのか
・利益はどこで生まれるのか
・為替や在庫リスクをどう考えるのか
このような内容が整理されていないと、事業内容が不明確に見えてしまいます。
専門家が関与することで、申請人へのヒアリングを通じて、頭の中にある事業構想を、第三者にも伝わる形に整理できます。
経営管理ビザの事業計画書では、「本人は分かっている」だけでは足りません。
入管提出資料として、読み手に伝わる形にする必要があります。
専門家に依頼するメリット2:売上計画の根拠を整理できる
事業計画書で特に重要なのが、売上計画です。
自作の事業計画書では、売上目標だけが記載されていて、その根拠が十分に説明されていないことがあります。
たとえば、
・1年目売上1,000万円
・2年目売上2,000万円
・3年目売上3,000万円
と書かれていても、なぜその売上が見込めるのかが分からなければ、説得力はありません。
売上計画を作る際には、業種に応じて、次のような前提を整理する必要があります。
・客単価
・販売数量
・営業日数
・顧客数
・リピート率
・受注件数
・販売チャネル
・広告宣伝費
・既存取引先
・新規顧客開拓の方法
専門家に依頼することで、単なる売上目標ではなく、根拠のある売上計画として整理しやすくなります。
また、売上計画が過度に楽観的な場合には、現実的な水準に見直すことも重要です。
事業計画書では、大きな売上を掲げることよりも、その売上が合理的に説明できることの方が大切です。
専門家に依頼するメリット3:経費計画と資金繰りを整合させられる
経営管理ビザの事業計画書では、売上計画だけでなく、経費計画と資金繰りも重要です。
自作の事業計画書では、売上は大きく書かれている一方で、必要な経費が十分に見込まれていないケースがあります。
たとえば、次のような経費が抜けやすいです。
・家賃
・人件費
・社会保険料
・仕入原価
・広告宣伝費
・外注費
・通信費
・水道光熱費
・システム利用料
・専門家費用
・許認可関連費用
・減価償却費
・租税公課
特に新基準では、常勤職員1名以上の雇用が重要になるため、人件費や社会保険料を事業計画に反映する必要があります。
また、利益が出る計画になっていても、資金繰りが成り立たない場合があります。
たとえば、仕入や内装工事、設備投資、人件費の支払いが先行し、売上入金まで時間がかかる場合には、手元資金が不足する可能性があります。
専門家に依頼することで、損益計画だけでなく、資金繰りの観点からも事業計画を確認できます。
これは、事業計画書を自作する場合に特につまずきやすい部分です。
専門家に依頼するメリット4:資本金3,000万円の使途を整理できる
新基準では、資本金等3,000万円以上が重要なポイントになります。
しかし、事業計画書では、単に「資本金3,000万円を用意した」と書くだけでは十分ではありません。
重要なのは、その資金を事業のためにどのように使うのかです。
たとえば、次のような使途を整理する必要があります。
・事務所や店舗の初期費用
・内装工事費
・設備・什器備品
・仕入資金
・広告宣伝費
・人件費
・社会保険料
・専門家費用
・許認可関連費用
・運転資金
・予備資金
資本金を初期費用だけで使い切ってしまう計画では、事業開始後の資金繰りに不安が残ります。
一方で、資金を使わずに預金として残しておくだけでも、事業計画上の説明としては弱い場合があります。
どの程度を初期投資に使い、どの程度を運転資金として確保するのか。
事業内容に応じて、合理的な資金使途を整理することが重要です。
専門家に依頼することで、資本金3,000万円を単なる数字ではなく、事業計画の中で意味のある資金計画として説明しやすくなります。
専門家に依頼するメリット5:常勤職員の雇用計画を反映できる
新基準では、常勤職員1名以上の雇用も重要になります。
事業計画書では、単に「常勤職員を雇用する予定です」と書くだけでは不十分です。
次のような点を整理する必要があります。
・誰を雇用するのか
・いつから雇用するのか
・どの業務を担当するのか
・給与はいくらか
・社会保険料を見込んでいるか
・申請人本人との役割分担はどうなるか
・売上計画や資金計画と整合しているか
常勤職員の雇用は、事業の実体を示す要素であると同時に、毎月の固定費でもあります。
そのため、人員計画は、売上計画や経費計画と一体で整理する必要があります。
専門家に依頼することで、常勤職員の役割、給与、人件費、社会保険料、申請人本人との役割分担を、事業計画書の中で自然に説明できます。
専門家に依頼するメリット6:申請人本人の経歴と事業内容をつなげられる
経営管理ビザでは、申請人本人が日本で事業の経営または管理に従事することが必要です。
そのため、事業計画書では、申請人本人の経歴と、今回の事業内容とのつながりを説明することが重要です。
たとえば、次のような点を整理します。
・これまでの職務経験
・経営経験や管理経験
・今回の事業に活かせる専門知識
・取引先や人脈
・語学力
・日本での事業運営体制
・常勤職員や外部専門家との役割分担
申請人本人の経験と事業内容が自然につながっている場合は、その点を分かりやすく説明することが重要です。
一方で、経験が十分でない場合には、どのように不足部分を補うのかを整理する必要があります。
たとえば、日本語対応ができる常勤職員を雇用する、税理士や行政書士などの外部専門家と連携する、業務経験のある従業員を配置するなど、事業運営体制全体で説明することが考えられます。
専門家に依頼することで、申請人本人の経歴を単なる履歴ではなく、事業計画の説得力につながる形で整理できます。
専門家に依頼するメリット7:必要な資料を整理できる
経営管理ビザの事業計画書を作成するには、申請人からのヒアリングだけでなく、さまざまな資料を確認する必要があります。
たとえば、次のような資料です。
・会社の登記事項証明書
・定款
・事務所や店舗の賃貸借契約書
・資本金の払込資料
・通帳の写し
・見積書
・請求書
・事業所の写真
・取引先との契約書や見積書
・メニュー表や商品資料
・仕入先資料
・雇用契約書や労働条件通知書
・申請人本人の履歴書
・許認可に関する資料
・売上計画や資金繰りの前提資料
これらの資料が不足していると、事業計画書の内容も抽象的になります。
また、事業計画書に書いてある内容と、添付資料の内容が食い違っていると、申請全体の信頼性に影響します。
専門家に依頼することで、事業計画書の作成に必要な資料を早い段階で整理し、内容の整合性を確認しながら進めることができます。
専門家に依頼するメリット8:行政書士・税理士との連携がしやすい
経営管理ビザの申請では、行政書士が申請全体を担当し、税理士が会社設立後の税務や決算を担当することが多くあります。
一方で、事業計画書の作成や財務計画、事業計画評価書については、中小企業診断士の関与が有効な場面があります。
行政書士は、在留資格申請や許認可手続の専門家です。
税理士は、税務申告や会計の専門家です。
中小企業診断士は、事業計画、経営分析、資金繰り、経営改善の専門家です。
それぞれの専門領域は重なり合う部分もありますが、経営管理ビザの事業計画書では、これらの視点をつなげることが重要です。
当事務所は、中小企業診断士・行政書士として、入管提出を前提とした事業計画書作成と、経営・財務面の整理の両方に対応しています。
また、行政書士等の他士業の先生から、事業計画書作成や評価書作成の部分のみをご依頼いただくことも可能です。
自作と専門家依頼の違い
経営管理ビザの事業計画書は、自分で作成することも可能です。
ただし、自作と専門家依頼では、主に次のような違いがあります。
自作の場合
・費用を抑えられる
・自分の言葉で事業を説明できる
・事業構想を整理するきっかけになる
一方で、次のようなリスクがあります。
・売上計画の根拠が弱くなりやすい
・経費計画や資金繰りが甘くなりやすい
・入管提出を前提とした構成になっていないことがある
・事業内容が抽象的になりやすい
・添付資料との整合性を見落としやすい
・追加資料や不許可後に大幅な修正が必要になることがある
専門家に依頼する場合
・事業内容を第三者に伝わる形に整理できる
・売上計画、経費計画、資金繰りを整合させやすい
・資本金や常勤職員の計画を事業計画に反映できる
・必要資料を早い段階で整理できる
・入管提出を前提とした構成にしやすい
・行政書士や税理士との連携がしやすい
・事業計画評価書の作成にもつなげやすい
もちろん、事業計画のみで審査をされるわけではないので、専門家に依頼したからといって、許可が保証されるわけではありません。
しかし、事業計画書の内容を具体的・合理的・実現可能なものに近づけることで、申請資料全体の説得力を高めることはできます。
事業計画書作成を依頼した方がよいケース
次のような場合には、事業計画書の作成を専門家に依頼することをおすすめします。
・事業計画書を何から書けばよいか分からない
・テンプレートに入力してみたが、内容に自信がない
・売上計画や資金繰りの作り方が分からない
・資本金3,000万円の使途をどう書けばよいか迷っている
・常勤職員の雇用計画をどう反映すべきか分からない
・申請人本人の経歴と事業内容のつながりを説明しにくい
・事業内容が不明確と指摘された
・入管から追加資料を求められた
・一度不許可になり、再申請を検討している
・行政書士から事業計画書や評価書を求められている
・申請前に専門家の視点で確認してほしい
事業計画書は、申請直前に慌てて作るよりも、早い段階で整理した方が質を高めやすくなります。
また、作成過程で、事業内容、資金計画、人員計画、許認可、事業所、売上根拠などの不足が見つかることもあります。
早めに確認することで、申請前に修正できる余地が広がります。
当事務所で対応できること
当事務所では、中小企業診断士・行政書士として、経営管理ビザに関連する事業計画書の作成、事業計画書の確認、事業計画評価書の作成に対応しています。
事業計画書作成
料金目安:100,000円(税別)〜
経営管理ビザ、融資、補助金、許認可申請等で必要となる事業計画書を作成します。
事業内容、売上計画、経費計画、資金繰り、実施体制等を整理し、審査・説明に耐えうる計画書としてまとめます。
事業計画評価書作成
料金目安:50,000円(税別)〜
申請人や行政書士の先生が作成した事業計画書について、中小企業診断士として内容を確認し、具体性・合理性・実現可能性を評価する書面を作成します。
赤字・債務超過時の改善見通し評価書
料金目安:100,000円(税別)〜
経営管理ビザの更新申請において、赤字決算や債務超過がある場合に、事業継続性や改善見通しを説明する評価書を作成します。
過去の財務分析、改善策、予想損益計算書、予想貸借対照表、予想キャッシュフロー計算書等を整理します。
特急対応の場合は、通常料金の3割増を目安としています。
ただし、資料の準備状況や当事務所の稼働状況により、お受けできない場合があります。
行政書士等の他士業からの部分依頼にも対応
経営管理ビザ申請では、行政書士の先生が申請全体を担当し、中小企業診断士が事業計画書の作成・確認・評価書作成部分を担当する形も考えられます。
特に、新基準では、事業計画書で説明すべき項目が増えています。
行政書士の先生からは、次のようなご相談が想定されます。
・事業計画書の作成部分だけ依頼したい
・売上計画や資金繰りに無理がないか確認したい
・資本金3,000万円の使途を整理してほしい
・常勤職員の人件費を事業計画書に反映したい
・中小企業診断士の事業計画評価書を作成してほしい
・申請人との顧客関係を維持したまま、評価書部分だけ外注したい
当事務所では、行政書士等の他士業の先生からの部分依頼にも対応しています。
原則として、申請者様との直接連絡は必要最小限とし、先生方の業務領域や顧客関係を尊重して対応いたします。
まとめ
経営管理ビザの事業計画書は、単なる作文や形式的な添付資料ではありません。
日本で行う事業について、具体性、合理性、実現可能性を示すための重要な資料です。
自分で作成することも可能ですが、入管提出を前提に、事業内容、売上計画、経費計画、資金繰り、人員計画、申請人本人の役割、資本金の使途を整合させるには、経営・財務・在留資格の視点が必要になります。
専門家に依頼するメリットは、単に文章を整えることではありません。
申請人の事業構想を、入管提出資料として伝わる事業計画書に整理し、必要な資料や数字との整合性を確認できることにあります。
当事務所では、中小企業診断士・行政書士として、経営管理ビザ新基準に対応した事業計画書の作成、事業計画書の確認、事業計画評価書の作成に対応しています。
経営管理ビザの事業計画書作成でお困りの場合は、お気軽にご相談ください。
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