
産業廃棄物収集運搬業許可を申請する際、会社の決算内容によっては「経営診断書」や「経理的基礎を有することの説明書」などの追加資料を求められることがあります。
特に注意が必要なのが、債務超過や赤字決算の場合です。
債務超過とは、会社の資産よりも負債の方が大きく、貸借対照表上の純資産がマイナスになっている状態をいいます。
産業廃棄物収集運搬業は、廃棄物を適正に収集・運搬する責任のある許可事業です。
そのため、許可申請では、講習会の修了、欠格要件、車両・容器、事業計画などに加えて、事業を継続して行うための経理的基礎があるかどうかも確認されます。
債務超過だからといって、必ず許可が取れないというわけではありません。
しかし、何も説明せずに申請すれば、経理的基礎に疑問を持たれる可能性があります。
そのため、債務超過や赤字決算の場合には、会社の財務状況、債務超過に至った原因、今後の改善見通し、資金繰り、利益計画などを整理したうえで、経営診断書等を提出することが重要になります。
本記事では、産業廃棄物収集運搬業許可で債務超過の場合に何が問題になるのか、経営診断書が必要になるケース、作成時の注意点について、中小企業診断士・行政書士の視点から解説します。
産業廃棄物収集運搬業許可では経理的基礎が確認される
産業廃棄物収集運搬業は、他人の産業廃棄物を業として収集・運搬するための許可です。
産業廃棄物収集運搬業の許可制度の概要については、環境省の産業廃棄物収集運搬業の許可に関する手続案内も参考になります。
廃棄物の処理は、環境保全や公衆衛生にも関わる重要な事業です。
そのため、許可を受ける事業者には、適正に事業を行うための体制が求められます。
許可申請では、主に次のような点が確認されます。
・講習会を修了していること
・欠格要件に該当しないこと
・必要な車両や容器を備えていること
・事業計画が適切であること
・取り扱う産業廃棄物の種類が明確であること
・経理的基礎を有していること
このうち、債務超過や赤字決算の場合に問題になりやすいのが、経理的基礎です。
経理的基礎とは、簡単にいえば、事業を的確かつ継続して行うための財務的な基盤のことです。
会社の財務状況が著しく悪化している場合、許可を受けた後も継続して適正な収集運搬業務を行えるのか、疑問を持たれる可能性があります。
産業廃棄物収集運搬業の更新手続きについては、環境省の産業廃棄物収集運搬業の許可の更新に関する手続案内も確認しておくとよいでしょう。
債務超過とはどのような状態か
債務超過とは、会社の資産よりも負債の方が大きい状態です。
貸借対照表で見ると、純資産がマイナスになっている状態です。
たとえば、会社の資産が1,000万円、負債が1,500万円であれば、純資産はマイナス500万円となり、債務超過の状態です。
債務超過は、すぐに倒産を意味するものではありません。
実際には、代表者借入金が多い会社や、創業間もない会社、一時的な赤字で純資産がマイナスになっている会社もあります。
しかし、許可申請の場面では、債務超過であること自体が、経理的基礎を確認するきっかけになります。
そのため、債務超過の場合には、なぜ債務超過になったのか、今後どのように改善するのかを説明することが重要です。
債務超過だと産廃許可は取れないのか
債務超過だからといって、直ちに産業廃棄物収集運搬業許可が取れないというわけではありません。
重要なのは、債務超過の状態をどのように説明し、今後の改善見通しを示せるかです。
たとえば、次のような事情がある場合には、経営診断書等で丁寧に説明する余地があります。
・一時的な赤字で債務超過になっている
・創業初期の先行投資で赤字になっている
・代表者借入金が多く、金融機関借入とは性質が異なる
・直近期では利益が改善している
・今後の受注見込みがある
・車両や人員体制は確保されている
・資金繰りに一定の見通しがある
・債務超過を解消する具体的な計画がある
反対に、債務超過であるにもかかわらず、改善策や利益計画が不明確な場合には、経理的基礎に疑問を持たれる可能性があります。
つまり、問題は「債務超過であること」そのものだけではありません。
債務超過の原因、現在の収益状況、今後の改善策、資金繰り、事業継続性を説明できるかどうかが重要です。
経営診断書が必要になるケース
産業廃棄物収集運搬業許可では、申請先の自治体や会社の財務状況によって、経営診断書や経理的基礎を有することの説明書などの提出を求められることがあります。
一般的には、次のようなケースで注意が必要です。
・直近決算で債務超過になっている
・直近決算で赤字になっている
・複数期連続で赤字が続いている
・自己資本比率が低い
・営業利益や経常利益がマイナスである
・資金繰りに不安がある
・新規許可申請で事業開始後の収支見通しが必要である
・更新申請時に財務状況が悪化している
ただし、必要書類や判断基準は、自治体によって取扱いが異なる場合があります。
同じ産業廃棄物収集運搬業許可であっても、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県など、申請先によって確認される書類や様式が異なることがあります。
そのため、債務超過や赤字決算の場合には、まず申請先自治体の手引きや様式を確認することが重要です。
東京都で産業廃棄物収集運搬業や産業廃棄物処分業の許可申請・更新申請を行う場合には、東京都環境局の産業廃棄物収集運搬業及び処分業の許可申請・届出等のページも確認しておくとよいでしょう。
経営診断書には何を書くのか
経営診断書や経理的基礎を有することの説明書では、単に「今後改善します」と書くだけでは不十分です。
会社の財務状況を分析し、改善見通しを数字と文章で説明する必要があります。
一般的には、次のような内容を整理します。
・会社概要
・申請する許可の内容
・直近決算の財務状況
・売上高、利益、純資産の推移
・債務超過額
・債務超過に至った原因
・赤字の原因
・現在の受注状況
・今後の売上見込み
・経費削減策
・利益改善策
・資金繰りの見通し
・債務超過の解消計画
・今後の事業継続性
・経理的基礎に関する専門家としての所見
重要なのは、過去の財務分析と今後の改善見通しをつなげることです。
過去の決算内容を見て、なぜ赤字や債務超過になったのかを分析し、そのうえで今後どのように改善していくのかを説明します。
「黒字予想」を書くだけでは足りない
経営診断書でよくある問題は、将来の損益計画だけが楽観的になっているケースです。
たとえば、直近まで赤字が続いているにもかかわらず、翌期から急に大幅な黒字になる計画が作られている場合、その根拠が問われます。
売上が増えるのであれば、なぜ増えるのかを説明する必要があります。
たとえば、次のような根拠です。
・既存取引先からの受注増加
・新規取引先との契約見込み
・許可取得後に対応可能になる案件
・車両増加による運搬能力の向上
・外注費の削減
・役員報酬や固定費の見直し
・採算の低い取引の見直し
・単価改定
・資金注入や増資
・代表者借入金の返済条件見直し
将来計画は、希望ではなく、根拠のある見込みとして作成する必要があります。
そのためには、決算書だけでなく、試算表、受注見込み、取引先情報、借入金返済予定表、車両・人員体制なども確認することが重要です。
債務超過の原因分析が重要
債務超過の場合、経営診断書では原因分析が重要です。
債務超過に至った原因が分からなければ、改善策も説得力を持ちません。
たとえば、次のような原因が考えられます。
・売上不足
・粗利率の低下
・人件費の増加
・外注費の増加
・車両関連費用の増加
・燃料費の高騰
・借入返済負担
・創業初期の先行投資
・不採算取引の継続
・一時的な特別損失
・代表者借入金への依存
原因によって、改善策は変わります。
売上不足が原因であれば、受注拡大や取引先開拓が必要です。
粗利率の低下が原因であれば、単価改定や外注費の見直しが必要です。
固定費過多が原因であれば、人員体制や車両維持費、家賃、保険料などを確認する必要があります。
このように、経営診断書では、単に財務数値を並べるのではなく、事業の実態を踏まえた分析が必要になります。
産業廃棄物収集運搬業特有の確認ポイント
産業廃棄物収集運搬業の経営診断書では、一般的な財務分析だけでなく、収集運搬業としての事業実態も確認する必要があります。
たとえば、次のような点です。
・どの種類の産業廃棄物を取り扱うのか
・どの地域で収集運搬を行うのか
・車両は何台あるのか
・車両の維持費や燃料費は見込まれているか
・運転者や作業者の体制はあるか
・主要取引先や受注見込みはあるか
・許可取得後にどのような売上が見込まれるか
・処分先との関係は整理されているか
・保険料、車検費用、修繕費などが経費に反映されているか
産業廃棄物収集運搬業は、許可を取れば自動的に売上が発生するものではありません。
取引先、車両、人員、処分先、運搬ルート、採算性などを踏まえて、実際に事業を継続できるかを説明する必要があります。
行政書士に依頼していれば経営診断書も作れるのか
産業廃棄物収集運搬業許可の申請は、行政書士に依頼して進めるケースが多いです。
ただし、債務超過や赤字決算の場合に必要となる経営診断書や経理的基礎を有することの説明書については、中小企業診断士、公認会計士、税理士など、財務や経営に関する専門家の関与が求められることがあります。
行政書士の先生が申請全体を担当し、財務診断書や経営診断書の部分だけを中小企業診断士に外注する形もあります。
この場合、申請者にとっては、許可申請全体は行政書士に任せつつ、財務面の説明を専門家に補強してもらえるというメリットがあります。
また、行政書士の先生にとっても、顧客関係を維持したまま、専門外になりやすい財務分析や改善見通しの部分だけを外部専門家に依頼することができます。
中小企業診断士に依頼するメリット
経営診断書を中小企業診断士に依頼するメリットは、決算書の数字を整理するだけではありません。
中小企業診断士は、経営診断、財務分析、経営改善計画、事業計画作成を専門とする国家資格です。
そのため、債務超過や赤字決算の場合でも、単に「財務状況が悪い」と見るのではなく、次のような観点から改善見通しを整理できます。
・赤字や債務超過の原因分析
・売上高、利益、純資産の推移
・収益性、安全性、資金繰りの確認
・今後の受注見込み
・固定費や変動費の見直し
・債務超過解消までの道筋
・事業継続性の説明
・許可申請に必要な経理的基礎の整理
産廃許可の経営診断書は、単なる決算書の要約ではありません。
会社の現状を分析し、今後も産業廃棄物収集運搬業を継続できる見込みを説明するための資料です。
そのため、債務超過や赤字決算の場合には、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
経営診断書の作成で必要になる資料
経営診断書を作成する際には、会社の財務状況や事業実態を確認するための資料が必要になります。
一般的には、次のような資料を確認します。
・直近3期分の決算書
・法人税申告書一式
・勘定科目内訳書
・直近の試算表
・借入金の返済予定表
・代表者借入金の状況が分かる資料
・売上先、取引先、受注見込みに関する資料
・車両の一覧
・人員体制が分かる資料
・今後の売上計画
・今後の経費計画
・資金繰りの見込み
・許可申請書類の一部
資料が不足していると、経営診断書の内容も抽象的になってしまいます。
特に、債務超過の解消見込みを説明する場合には、将来の売上計画や利益計画だけでなく、資金繰りや借入返済の見通しも重要になります。
早めに相談した方がよいケース
次のような場合には、早めに相談することをおすすめします。
・決算書を見たら純資産がマイナスだった
・行政書士から経営診断書が必要と言われた
・自治体から経理的基礎に関する追加資料を求められた
・赤字決算が続いている
・自己資本比率が低い
・更新申請を控えているが財務状況が悪化している
・新規許可申請をしたいが、財務面に不安がある
・どの資料を準備すればよいか分からない
・申請先自治体の様式にどう書けばよいか分からない
経営診断書は、申請直前に慌てて作るよりも、早い段階で財務状況を確認した方が対応しやすくなります。
場合によっては、役員借入金の整理、増資、借入返済条件の確認、収支計画の見直しなど、申請前に検討すべき事項が見つかることもあります。
当事務所で対応できること
当事務所では、中小企業診断士・行政書士として、産業廃棄物収集運搬業許可に関連する経営診断書、経理的基礎を有することの説明書、改善見通し資料の作成に対応しています。
対応内容の例は、次のとおりです。
・債務超過、赤字決算時の財務分析
・経理的基礎に関する説明書の作成
・経営診断書の作成
・債務超過の原因分析
・改善見通しの整理
・予想損益計算書の作成
・資金繰り見通しの整理
・行政書士等の他士業からの部分依頼
料金目安:100,000円(税別)〜
資料の準備状況、決算内容、申請先自治体の様式、必要な分析内容によって、報酬は変動します。
また、特急対応の場合は、通常料金の3割増を目安としています。
行政書士等の他士業からの部分依頼にも対応
当事務所では、行政書士等の他士業の先生からの部分依頼にも対応しています。
産業廃棄物収集運搬業許可の申請全体は行政書士の先生が担当し、経営診断書や経理的基礎を有することの説明書の作成部分のみを当事務所で対応することが可能です。
原則として、申請者様との直接連絡は必要最小限とし、先生方の業務領域や顧客関係を尊重して対応いたします。
次のような場合は、お気軽にご相談ください。
・顧客が債務超過で、経営診断書が必要になった
・産廃許可の更新申請で財務面の追加資料を求められた
・経理的基礎の説明書を中小企業診断士に作成してほしい
・決算書を見ても、改善見通しをどう説明すればよいか分からない
・申請者との関係を維持したまま、財務診断部分だけ外注したい
まとめ
産業廃棄物収集運搬業許可では、会社の財務状況によって、経理的基礎が確認されます。
債務超過や赤字決算だからといって、直ちに許可が取れないとは限りません。
しかし、財務状況が悪化している場合には、債務超過の原因、今後の改善策、利益計画、資金繰り、事業継続性を具体的に説明する必要があります。
そのため、債務超過や赤字決算の場合には、経営診断書や経理的基礎を有することの説明書の作成が重要になります。
経営診断書は、単なる決算書の要約ではありません。
会社の財務状況を分析し、今後も産業廃棄物収集運搬業を継続できる見込みを説明するための資料です。
当事務所では、中小企業診断士・行政書士として、産業廃棄物収集運搬業許可に関連する経営診断書、経理的基礎を有することの説明書、改善見通し資料の作成に対応しています。
債務超過や赤字決算で産廃許可申請に不安がある場合、または行政書士の先生から経営診断書の作成部分だけを依頼したい場合は、お気軽にご相談ください。
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