
在留資格「経営・管理」、いわゆる経営管理ビザの申請では、事業内容をどれだけ具体的に説明できているかが非常に重要です。
在留資格「経営・管理」の申請手続きや必要書類については、出入国在留管理庁の在留資格「経営・管理」ページもあわせて確認しておくとよいでしょう。
会社を設立し、資本金を準備し、事務所や店舗を借りていたとしても、事業計画書の内容が抽象的なままだと、入管から「事業内容が不明確」と見られてしまうことがあります。
経営者本人としては、これから行う事業のイメージが頭の中にあるかもしれません。
しかし、申請書類を見る側からすると、事業計画書に具体的な内容が書かれていなければ、どのような事業を、誰に対して、どのように行い、どのように売上を上げていくのかを判断することができません。
特に近年は、経営管理ビザの審査において、事業の具体性、実現可能性、継続性がより重視される傾向にあります。
経営管理ビザの新基準については、出入国在留管理庁の「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」も確認しておくとよいでしょう。
また、新基準では、資本金等3,000万円以上、常勤職員1名以上、日本語能力、経営経験・学歴、事業計画書の専門家確認など、事業計画書で整理すべき事項も増えています。
本記事では、経営管理ビザ申請で「事業内容が不明確」と見られやすい理由と、事業計画書を見直す際のポイントについて、中小企業診断士・行政書士の視点から解説します。
経営管理ビザで「事業内容が不明確」とはどういう状態か
経営管理ビザにおける「事業内容が不明確」とは、単に文章が短いという意味ではありません。
問題になるのは、事業計画書を読んでも、事業の実態や収益構造が具体的に分からない状態です。
たとえば、次のような記載です。
・日本で貿易業を行う
・飲食店を経営する
・コンサルティング事業を行う
・ECサイトで商品を販売する
・海外向けに日本の商品を販売する
これらの記載自体が悪いわけではありません。
しかし、これだけでは、実際にどのような事業を行うのかが十分に伝わりません。
たとえば「貿易業」といっても、何を仕入れ、どこに販売し、どのような取引条件で、どこから利益が生まれるのかを説明する必要があります。
「飲食店」であれば、店舗の場所、席数、客単価、回転数、営業日数、メニュー、仕入先、人員体制、集客方法などを整理する必要があります。
「コンサルティング事業」であれば、誰に対して、どのような専門性を提供し、どのような契約形態で売上を得るのかを明確にする必要があります。
つまり、経営管理ビザの事業計画書では、業種名だけでは足りません。
事業の中身、顧客、提供価値、収益構造、運営体制まで具体的に説明することが重要です。
事業内容が不明確に見られやすい理由
経営管理ビザ申請で事業内容が不明確に見られやすい理由はいくつかあります。
1. 事業の説明が抽象的すぎる
最も多いのは、事業内容の説明が抽象的すぎるケースです。
たとえば、「海外とのネットワークを活かして貿易業を行う」「日本の良い商品を海外に販売する」「地域に根差した飲食店を運営する」といった記載です。
これらは方向性としては分かりますが、事業計画書としては不十分です。
入管に提出する事業計画書では、もう一段具体的に、次のような点を説明する必要があります。
・具体的に何を販売するのか
・誰が顧客なのか
・どの地域・国・市場を対象にするのか
・どのように仕入れるのか
・どのように販売するのか
・価格設定はどうするのか
・どこで利益が生まれるのか
・申請人本人がどのような役割を担うのか
抽象的な表現だけでは、事業の実現可能性を判断することができません。
2. 売上の発生プロセスが分からない
事業内容を説明するうえで重要なのが、売上がどのように発生するかです。
事業計画書には売上予測を書くことが多いですが、売上金額だけが書かれていても、その根拠が分からなければ説得力はありません。
たとえば、年間売上3,000万円と書かれていても、次の点が不明確であれば、計画としては弱く見えます。
・何を販売して3,000万円になるのか
・単価はいくらか
・月に何件販売するのか
・顧客はどこから獲得するのか
・既存の取引先や見込み客はいるのか
・広告宣伝や営業活動はどのように行うのか
経営管理ビザの事業計画書では、「売上がいくらになるか」だけではなく、「なぜその売上が見込めるのか」を説明する必要があります。
3. 申請人本人の役割が曖昧
経営管理ビザは、日本で事業の経営または管理に従事するための在留資格です。
そのため、事業計画書では、申請人本人がどのように事業に関与するのかを明確にする必要があります。
ところが、事業内容は書かれていても、申請人本人の役割が曖昧なケースがあります。
たとえば、次のようなケースです。
・実際の運営は日本人スタッフや家族が行うように見える
・申請人本人の経験と事業内容のつながりが弱い
・代表者として何を判断し、何を管理するのかが書かれていない
・共同経営者との役割分担が不明確
・現場業務と経営業務の区別が整理されていない
このような場合、申請人本人が本当に日本で経営または管理を行うのかが分かりにくくなります。
事業計画書では、申請人本人の経歴、経験、強み、担当業務、意思決定権限を、事業内容と結びつけて説明することが重要です。
4. 事業に必要な人員・設備・許認可が整理されていない
事業内容を具体的に説明するためには、その事業を行うために必要な人員、設備、事務所、店舗、許認可なども整理する必要があります。
たとえば、飲食店であれば店舗設備、厨房機器、食品衛生責任者、営業許可、人員体制などが重要になります。
人材紹介業や人材派遣業であれば、許認可や責任者、事務所要件などの確認が必要になります。
貿易業であれば、仕入先、販売先、在庫保管、輸送、通関、決済条件などを整理する必要があります。
これらが事業計画書に書かれていないと、事業が実際に動き出せる状態なのかが分かりにくくなります。
5. 事業計画書と添付資料がつながっていない
事業計画書の内容は、添付資料との整合性も重要です。
たとえば、事業計画書では飲食店を開業すると書いているのに、店舗の賃貸借契約書、内装工事見積書、厨房機器見積書、メニュー、営業許可に関する資料などが十分に整理されていなければ、事業実体の説明として弱くなります。
貿易業であれば、仕入先や販売先とのやり取り、見積書、発注書、契約書、商品資料、販売ルートなどの資料が重要になります。
事業計画書だけで完結させるのではなく、裏付け資料とセットで説明することが大切です。
業種別に見た「不明確」と見られやすいポイント
飲食店の場合
飲食店の場合、事業内容自体は分かりやすい一方で、売上計画や人員体制が曖昧になりやすい傾向があります。
たとえば、次の点を整理する必要があります。
・店舗の立地
・席数
・営業時間
・営業日数
・メニュー構成
・客単価
・回転数
・仕入原価
・人件費
・集客方法
・営業許可
・申請人本人の役割
単に「飲食店を経営する」と書くだけではなく、どのような店舗として運営し、どのように売上を上げるのかを具体的に説明する必要があります。
貿易業・中古車輸出業の場合
貿易業や中古車輸出業では、取引の流れを具体的に整理することが重要です。
たとえば、中古車輸出業であれば、次のような点を説明する必要があります。
・どのような中古車を扱うのか
・どこから仕入れるのか
・どの国や地域に販売するのか
・販売先は法人か個人か
・輸送や通関はどのように行うのか
・代金回収はどのように行うのか
・為替や在庫リスクをどう考えるのか
・申請人本人の海外ネットワークをどう活かすのか
貿易業は「海外との取引」という言葉だけでは具体性が不足しやすいため、商流を丁寧に整理する必要があります。
コンサルティング業の場合
コンサルティング業は、特に事業内容が抽象的に見られやすい業種です。
「経営コンサルティング」「海外進出支援」「マーケティング支援」といった表現だけでは、具体的に何を提供するのかが分かりにくい場合があります。
そのため、次の点を整理する必要があります。
・対象顧客
・提供サービス
・申請人本人の専門性
・サービス単価
・契約期間
・集客方法
・既存顧客や見込み顧客
・成果物
・業務の実施体制
特に、申請人本人の経歴や専門性と、提供するサービスの関係を明確にすることが重要です。
EC事業の場合
EC事業では、販売する商品と販売チャネルを具体的に説明する必要があります。
たとえば、次のような点です。
・販売商品
・仕入先
・販売先
・販売チャネル
・広告宣伝方法
・在庫管理
・発送体制
・返品対応
・粗利益率
・アクセス数や購入率の見込み
「ECサイトで販売する」というだけでは、事業内容としては不十分です。
どのような商品を、どのような顧客に、どのような方法で販売するのかを整理する必要があります。
事業計画書を見直すときのポイント
事業内容が不明確に見られないようにするためには、事業計画書を次の観点から見直すことが重要です。
1. 「誰に、何を、どのように売るのか」を明確にする
まずは、事業の基本構造を整理します。
・誰に売るのか
・何を売るのか
・どのように売るのか
・いくらで売るのか
・どのように顧客を獲得するのか
この部分が曖昧なままだと、売上計画や資金計画も弱くなります。
事業計画書の冒頭では、事業の概要を簡潔に書くとともに、具体的な商品・サービス、顧客層、販売方法を明確にすることが大切です。
2. 売上計画の根拠を数字で示す
売上計画は、単に希望額を書くのではなく、根拠を数字で示す必要があります。
飲食店であれば、客単価、客数、回転数、営業日数などから売上を積み上げます。
貿易業であれば、取扱商品、販売単価、販売数量、取引件数などをもとに売上を説明します。
コンサルティング業であれば、月額顧問料、契約件数、スポット案件数などから売上を組み立てます。
売上計画に根拠があると、事業の実現可能性を説明しやすくなります。
3. 経費計画と資金繰りを整合させる
事業内容が具体化できていても、経費計画や資金繰りが現実的でなければ、事業継続性に疑問を持たれる可能性があります。
特に、次の費用は見落とされやすい項目です。
・役員報酬
・従業員給与
・社会保険料
・家賃
・広告宣伝費
・外注費
・仕入費用
・水道光熱費
・通信費
・税金
・許認可や専門家費用
経費を少なく見せれば利益が出るように見えますが、現実的でない経費計画はかえって説得力を下げます。
事業内容に応じて必要な費用を見込み、資金繰りが成り立つかを確認することが重要です。
4. 申請人本人の経験と役割を明確にする
事業計画書では、申請人本人がなぜその事業を行うのか、どのような役割を担うのかを説明する必要があります。
たとえば、次のような内容です。
・これまでの職務経験
・経営経験または管理経験
・業界経験
・海外ネットワーク
・語学力
・仕入先や販売先との関係
・日本での事業運営における担当業務
・常勤職員や外部専門家との役割分担
申請人本人の経歴と事業内容がつながっていると、事業計画全体の説得力が高まります。
5. 裏付け資料と整合させる
事業計画書に書いた内容は、添付資料と整合している必要があります。
たとえば、以下のような資料です。
・会社の登記事項証明書
・定款
・事務所や店舗の賃貸借契約書
・内装工事や設備の見積書
・仕入先や販売先との契約書・見積書
・商品資料
・メニュー表
・WebサイトやSNS
・許認可関係資料
・従業員の雇用契約書
・資金の出所を示す資料
事業計画書だけを整えても、添付資料との整合性が取れていなければ、説明としては不十分です。
中小企業診断士・行政書士に依頼するメリット
経営管理ビザの事業計画書は、自分で作成することも可能です。
しかし、事業内容を具体化し、売上計画、経費計画、資金繰り、人員体制、申請人本人の役割、添付資料との整合性まで整理するには、一定の専門的な視点が必要です。
中小企業診断士は、事業計画、収支計画、資金繰り、事業の実現可能性を整理する専門家です。
また、行政書士は、在留資格申請や許認可手続きに関する実務を扱う専門家です。
当事務所では、中小企業診断士・行政書士として、経営管理ビザ申請における事業計画書の作成、事業計画評価書の作成、専門家確認に対応しています。
単に文章を整えるだけではなく、事業内容、売上計画、資金計画、人員体制、申請人本人の経歴、添付資料との整合性を踏まえて、入管提出を前提とした事業計画書として整理します。
当事務所で対応できること
当事務所では、中小企業診断士・行政書士として、経営管理ビザ申請における事業計画書の作成、事業計画評価書の作成、専門家確認に対応しています。
単に文章を整えるだけではなく、事業内容、売上計画、経費計画、資金計画、人員体制、申請人本人の経歴、添付資料との整合性を踏まえて、入管提出を前提とした事業計画書として整理します。
特に、事業内容が抽象的である場合、売上計画の根拠が弱い場合、申請人本人の役割が整理できていない場合、追加資料への対応が必要な場合には、事業計画書の見直しが重要になります。
また、行政書士の先生方からの、事業計画書や評価書部分のみのご依頼にも対応しています。
原則として、申請者様との直接連絡は必要最小限とし、先生方の業務領域や顧客関係を尊重して対応します。
ご依頼の流れ
当事務所にご依頼いただく場合の基本的な流れは、以下のとおりです。
1. お問い合わせ
まずは、お問い合わせフォームよりご相談ください。
申請の種類、事業内容、現在の準備状況、在留期限、行政書士の先生が関与しているかどうかなどを確認します。
2. 必要資料の確認
会社概要、事業内容、申請人本人の経歴、資本金の状況、事務所・店舗、売上計画、経費計画、添付資料の有無などを確認します。
この段階で、事業計画書の作成のみが必要なのか、事業計画評価書や専門家確認まで必要なのかも整理します。
3. お見積り・ご依頼
業務範囲を確認したうえで、報酬額と対応内容をご案内します。
内容に問題がなければ、正式にご依頼いただきます。
4. ヒアリング・資料整理
必要に応じて、メール、オンライン面談、電話などでヒアリングを行います。
事業内容、売上計画、資金計画、申請人本人の役割、人員体制、添付資料との整合性などを整理します。
5. 事業計画書・評価書の作成
ヒアリング内容と資料をもとに、入管提出を前提とした事業計画書を作成します。
必要に応じて、事業計画評価書や専門家確認に関する書類も作成します。
6. 内容確認・修正
作成した書類をご確認いただき、必要に応じて修正します。
行政書士の先生が申請を担当されている場合は、先生方の申請方針も踏まえて調整します。
7. 納品
最終版の事業計画書・評価書を納品します。
納品後、申請書類全体との整合性について確認が必要な場合には、必要な範囲で対応します。
料金の目安
経営管理ビザ申請に関する事業計画書・評価書作成の料金目安は、以下のとおりです。
・事業計画書の作成:100,000円(税別)
・事業計画評価書の作成:50,000円(税別)
事業計画書と事業計画評価書をあわせてご依頼いただく場合は、内容や業務範囲に応じて個別にお見積りいたします。
また、行政書士の先生方からの部分依頼にも対応しています。
なお、事業内容が複雑な場合、複数店舗・複数事業を含む場合、追加資料対応や不許可後の再申請に関する見直しが必要な場合には、別途お見積りとなることがあります。
正式な報酬額については、ご相談内容と必要書類の状況を確認したうえでご案内します。
まとめ
経営管理ビザ申請で「事業内容が不明確」と見られる原因は、単に説明文が短いことだけではありません。
重要なのは、事業の中身、顧客、販売方法、売上の根拠、運営体制、申請人本人の役割、添付資料との整合性が具体的に整理されているかどうかです。
事業内容が抽象的なままだと、事業の実現可能性や継続性を十分に説明することができません。
経営管理ビザの事業計画書では、「何をする会社か」だけではなく、「誰に、何を、どのように提供し、どのように売上を上げ、どのように継続していくのか」を具体的に示す必要があります。
経営管理ビザ申請における事業計画書の作成、事業計画評価書、専門家確認でお困りの場合は、中小企業診断士・行政書士の視点からサポートいたします。
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