
在留資格「経営・管理」、いわゆる経営管理ビザについて、新基準への対応が重要になっています。
出入国在留管理庁の公式情報では、経営管理ビザの新基準として、申請者が営む会社等において、1人以上の常勤職員を雇用することが必要になるとされています。
これにより、経営管理ビザの認定申請・変更申請では、資本金等3,000万円以上という資金面の要件だけでなく、常勤職員1名以上の雇用についても、事業計画書の中で具体的に説明する必要があります。
しかし、実務上は、
「常勤職員とは誰を指すのか」
「役員や親族は常勤職員に含まれるのか」
「アルバイトや業務委託でもよいのか」
「いつまでに雇用すればよいのか」
「人件費や社会保険料は事業計画書に反映すべきか」
「その職員が何の業務を担当するのか説明する必要があるのか」
といった疑問が出やすいところです。
重要なのは、単に「1人雇用します」と書くことではありません。
その常勤職員が、事業計画上どのような役割を担うのか、なぜその人員が必要なのか、人件費を継続的に支払える計画になっているのかを、具体的に説明することです。
本記事では、経営管理ビザ新基準における常勤職員1名以上の考え方と、事業計画書で説明すべきポイントについて、中小企業診断士・行政書士の視点から解説します。
経営管理ビザ新基準では常勤職員1名以上が重要に
経営管理ビザでは、日本で事業の経営または管理に従事する外国人について、事業の実体や継続性が確認されます。
新基準では、資本金等3,000万円以上、常勤職員1名以上、経営者としての経験・学歴、日本語能力、事業計画書の専門家確認などが重要なポイントとなっています。
このうち、常勤職員1名以上の雇用は、事業の実体を示すうえで重要な要素です。
単に会社を設立しただけではなく、実際に日本で事業を運営する体制があるかどうかが問われます。
そのため、事業計画書では、
・誰を雇用するのか
・どの業務を担当するのか
・いつから雇用するのか
・給与はいくらか
・社会保険等の手続を行うのか
・売上計画や資金計画と整合しているか
を整理する必要があります。
常勤職員1名を雇うだけでは不十分
経営管理ビザ新基準では、常勤職員1名以上の雇用が重要になります。
しかし、事業計画書の観点から見ると、単に「常勤職員を1名雇用予定です」と書くだけでは不十分です。
なぜなら、常勤職員の雇用は、事業の内容、売上計画、人件費、資金繰り、組織体制と密接に関係するからです。
たとえば、飲食店であれば、調理、接客、仕入、店舗運営などの業務があります。
貿易業であれば、仕入先との交渉、輸入手続、在庫管理、販売先対応、営業活動などが必要になります。
EC事業であれば、商品登録、受注処理、顧客対応、発送管理、広告運用などの業務が発生します。
このように、事業内容によって必要な人材は異なります。
したがって、事業計画書では、常勤職員がその事業においてどのような役割を担うのかを説明する必要があります。
事業計画書で説明すべきポイント
常勤職員1名以上について事業計画書で説明する際には、次のようなポイントを整理すると分かりやすくなります。
・常勤職員の雇用予定時期
・担当業務
・必要とする理由
・雇用形態
・給与水準
・社会保険料等を含めた人件費
・売上計画との関係
・資金計画との関係
・申請人本人との役割分担
・今後の増員計画
特に重要なのは、常勤職員と申請人本人の役割分担です。
経営管理ビザでは、申請人本人が経営または管理に従事することが前提です。
そのため、常勤職員が現場業務を担当し、申請人本人が経営判断、取引先対応、資金管理、人員管理、営業方針の決定などを担う形で整理すると、事業体制が分かりやすくなります。
常勤職員の業務内容を明確にする
常勤職員を雇用する場合には、その職員が何の業務を担当するのかを明確にする必要があります。
たとえば、次のような記載が考えられます。
飲食店の場合
常勤職員は、店舗運営スタッフとして、接客、予約管理、仕入補助、在庫管理、清掃、開店・閉店業務などを担当する。
申請人本人は、店舗全体の経営方針、メニュー開発、仕入先選定、売上管理、人員管理、広告宣伝、顧客対応方針の決定を担当する。
貿易業の場合
常勤職員は、商品の受発注管理、在庫管理、納期確認、販売先との連絡、書類整理、顧客対応を担当する。
申請人本人は、海外仕入先との交渉、商品選定、販売戦略、価格決定、資金管理、取引先開拓を担当する。
EC事業の場合
常勤職員は、商品登録、受注処理、発送管理、問い合わせ対応、在庫確認、販売ページの更新補助を担当する。
申請人本人は、商品戦略、販売チャネル選定、広告戦略、仕入先交渉、売上管理、事業計画の策定を担当する。
このように、常勤職員の業務内容と申請人本人の経営管理活動を分けて整理することで、事業体制が具体的になります。
人件費・社会保険料を資金計画に反映する
常勤職員を雇用する場合、給与だけでなく、社会保険料や労働保険料などの会社負担も発生します。
事業計画書では、人件費を現実的に見込むことが重要です。
たとえば、月額給与25万円の常勤職員を雇用する場合、単純に年間300万円の給与だけを見込めばよいわけではありません。
会社負担分の社会保険料、労働保険料、通勤手当、採用費、備品費なども考慮する必要があります。
事業計画書では、次のような費用を整理します。
・基本給
・通勤手当
・賞与の有無
・社会保険料の会社負担分
・労働保険料
・採用費
・教育研修費
・業務に必要な備品やシステム費用
人件費を過小に見積もると、利益計画は良く見えます。
しかし、実際に必要な人件費を反映していない計画は、事業計画としての信頼性を下げる可能性があります。
売上計画と人員計画の整合性が重要
常勤職員を雇用する場合、売上計画と人員計画の整合性も重要です。
たとえば、売上計画が大きいにもかかわらず、実際に業務を担当する人員が少なすぎる場合、計画の実現可能性に疑問が残ります。
一方で、創業初期から人件費が重すぎる場合、売上が立ち上がるまでの資金繰りが厳しくなる可能性があります。
事業計画書では、次のような点を確認する必要があります。
・売上規模に対して人員体制が不足していないか
・人件費を支払っても利益が出る計画になっているか
・売上が計画どおりに立ち上がらない場合でも資金繰りは維持できるか
・常勤職員の業務量は現実的か
・将来的な増員計画はあるか
特に、新基準では資本金等3,000万円以上の論点と常勤職員1名以上の論点が同時に関係します。
資本金等3,000万円をどのように使うのかを説明する際にも、人件費・社会保険料・採用費を資金使途に含めることが重要です。
役員・親族・アルバイト・業務委託は常勤職員に含まれるのか
常勤職員に誰が含まれるのかは、実務上よく質問される点です。
ただし、個別事情によって判断が必要になるため、安易に「この人は必ず含まれる」「この人は必ず含まれない」と断定するのは避けるべきです。
一般的には、常勤職員といえるかどうかについては、雇用契約、勤務実態、勤務時間、給与、社会保険等の加入状況、業務内容などを踏まえて判断されます。
アルバイト・パート
短時間勤務のアルバイトやパートについては、常勤職員として説明することは難しい場合があります。
ただし、勤務時間や雇用条件によっては個別判断が必要です。
業務委託
業務委託契約の外注先は、通常、会社に雇用されている職員とは異なります。
そのため、常勤職員として説明することは難しいと考えられます。
親族
親族であっても、実際に会社と雇用関係があり、勤務実態があり、給与支払いや社会保険等の手続が適切に行われている場合には、個別に検討する余地があります。
ただし、名義だけの雇用や勤務実態のない雇用は問題になります。
役員
役員については、雇用される職員とは位置づけが異なる場合があります。
代表者や取締役を常勤職員として扱えるかは、会社の形態、役職、勤務実態、報酬、入管実務上の取扱いを踏まえ、慎重に確認する必要があります。
このように、常勤職員に該当するかどうかは、形式だけでなく実態が重要です。
不安がある場合には、申請前に行政書士等の専門家へ確認することをおすすめします。
雇用契約書・労働条件通知書など準備すべき資料
常勤職員を雇用する場合には、その雇用実態を説明できる資料を準備することが重要です。
想定される資料としては、次のようなものがあります。
・雇用契約書
・労働条件通知書
・履歴書
・職務内容が分かる資料
・賃金台帳
・出勤簿
・給与振込記録
・社会保険加入関係資料
・労働保険関係資料
・源泉所得税関係資料
・組織図
・業務分担表
・採用予定の場合は求人票や採用計画
認定申請や変更申請では、まだ雇用開始前のケースもあります。
その場合でも、採用予定者、雇用予定時期、担当業務、給与水準、採用方法などをできるだけ具体的に整理する必要があります。
更新申請の場合には、実際の雇用状況を示す資料が重要になります。
更新申請では既存の雇用状況と今後の対応方針が重要
既に経営管理ビザで在留している方の更新申請では、常勤職員の雇用状況や、新基準への適合見込みが重要になります。
出入国在留管理庁の公式情報では、既存在留者の更新申請について、経営状況や新基準への適合見込みなどを踏まえて判断する取扱いが示されています。
したがって、現時点で常勤職員を雇用していない場合でも、直ちに更新が不可能というわけではありません。
ただし、今後どのように常勤職員を雇用する予定なのか、いつまでに雇用するのか、その人件費をどのようにまかなうのかを整理することが重要です。
特に、赤字決算や債務超過がある場合には、人件費を追加で負担できるかどうかが大きな論点になります。
この場合には、売上改善計画、利益計画、資金繰り計画、改善見通し評価書などをあわせて整理する必要があります。
中小企業診断士が事業計画書で確認するポイント
中小企業診断士が経営管理ビザの事業計画書を確認する際には、常勤職員1名以上の有無だけでなく、その雇用が事業計画全体と整合しているかを確認します。
主な確認ポイントは次のとおりです。
・常勤職員の担当業務が明確か
・事業内容に対して必要な人員か
・申請人本人との役割分担が明確か
・人件費や社会保険料が収支計画に反映されているか
・資金繰り上、人件費を継続して支払えるか
・売上計画と人員計画が整合しているか
・雇用時期が事業の立ち上げスケジュールと合っているか
・雇用関係を示す資料が準備できるか
・将来的な増員計画が現実的か
事業計画評価書では、これらの観点から、事業計画の具体性・合理性・実現可能性を確認します。
常勤職員1名以上の要件は、単なる人数の問題ではなく、事業を継続的に運営する体制があるかどうかの問題です。
行政書士等の他士業からの部分依頼にも対応
経営管理ビザ申請では、行政書士の先生が申請全体を担当し、中小企業診断士が事業計画書の確認や評価書作成部分を担当する形も考えられます。
特に、新基準では、資本金等3,000万円以上、常勤職員1名以上、事業計画書の専門家確認など、経営・財務・人員計画に関する説明が重要になります。
行政書士の先生からは、次のようなご相談が想定されます。
・常勤職員の人件費を事業計画書にどう反映すべきか確認したい
・人員計画と売上計画の整合性を確認してほしい
・資本金3,000万円の資金使途に人件費をどう入れるべきか整理したい
・中小企業診断士の事業計画評価書を作成してほしい
・申請人との顧客関係を維持したまま、評価書部分だけ外注したい
当事務所では、行政書士等の他士業の先生からの部分依頼にも対応しています。
原則として、申請者様との直接連絡は必要最小限とし、先生方の業務領域や顧客関係を尊重して対応いたします。
当事務所で対応できること
当事務所では、中小企業診断士・行政書士として、経営管理ビザに関連する事業計画書、評価書、改善見通し資料の作成を行っています。
経営管理ビザ認定申請・変更申請向け
・事業計画書の確認
・常勤職員1名以上の人員計画整理
・人件費・社会保険料を含めた資金計画の確認
・売上計画、経費計画、資金繰りの確認
・事業計画評価書の作成
料金目安:50,000円(税別)〜
経営管理ビザ更新申請向け
・赤字決算時の改善見通し資料作成
・債務超過時の改善見通し評価書作成
・過去3期の財務分析
・予想損益計算書、予想貸借対照表、予想キャッシュフロー計算書の作成
・事業継続性と新基準への適合見込みの整理
料金目安:100,000円(税別)〜
特急対応の場合は、通常料金の3割増を目安としています。
ただし、資料の準備状況や当事務所の稼働状況により、お受けできない場合があります。
まとめ
経営管理ビザ新基準では、常勤職員1名以上の雇用が重要なポイントになります。
しかし、実務上は、単に1名雇用すればよいという話ではありません。
事業計画書では、その常勤職員がどのような業務を担当するのか、なぜ必要なのか、人件費を継続的に支払える計画になっているのか、申請人本人の経営管理活動とどのように役割分担するのかを説明する必要があります。
また、人件費や社会保険料は、売上計画、経費計画、資金繰り計画と整合していなければなりません。
特に、資本金等3,000万円以上の資金使途を説明する場合には、常勤職員の人件費や採用費も含めて整理することが重要です。
当事務所では、中小企業診断士・行政書士として、経営管理ビザ新基準に対応した事業計画書の確認、常勤職員の人員計画整理、事業計画評価書の作成に対応しています。
経営管理ビザ新基準への対応、常勤職員1名以上の説明、事業計画書の専門家確認でお困りの場合は、お気軽にご相談ください。
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