
経営管理ビザの更新を控えている方から、
「どのような場合に更新が不許可になりますか?」
「会社が赤字ですが、更新できますか?」
「売上が少ないと不許可になりますか?」
「資本金が3,000万円ないと、もう更新できないのでしょうか?」
といったご相談を受けることがあります。
経営管理ビザの更新は、
「黒字なら許可、赤字なら不許可」
といった一つの数字だけで判断されるものではありません。
出入国在留管理庁の在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドラインでは、更新許可について、申請人が行っている活動、在留状況、在留の必要性などを総合的に勘案して判断する考え方が示されています。
また、経営管理ビザについては、外国人経営者の在留資格基準の明確化についてにおいて、事業の継続性や事業者としての義務履行などについても具体的な考え方が示されています。
したがって、
「この条件に該当したら必ず不許可」
と単純に判断することはできません。
一方で、更新前に確認しておきたい重要なポイントはあります。
本記事では、経営管理ビザの更新で不許可につながる可能性がある主な要因と、更新前に確認しておきたいポイントについて、中小企業診断士・行政書士の視点から解説します。
経営管理ビザ更新で最初に確認したいこと
在留期間更新許可申請とは、現在持っている在留資格を変更せず、引き続き同じ在留資格に該当する活動を行うための手続です。
出入国在留管理庁の在留期間更新許可申請でも、対象者は「現に有する在留資格の活動を継続しようとする外国人」とされています。
経営管理ビザであれば、
日本で実際に事業の経営または管理を行っていること
が大前提になります。
そのうえで、
- 事業が実際に行われているか
- 今後も事業を継続できるか
- 経営者本人が実質的に経営に関与しているか
- 税金や社会保険等の義務を履行しているか
- 必要な許認可を取得しているか
- 在留状況に問題がないか
などを総合的に確認していくことになります。
理由1|実際に経営・管理活動を行っていない
経営管理ビザは、会社を設立して代表取締役として登記されていれば自動的に認められる在留資格ではありません。
重要なのは、本人が実際に、
- 経営方針を決定する
- 事業計画を策定する
- 取引先と交渉する
- 資金管理を行う
- 人材採用や従業員管理を行う
- 新規事業への投資判断を行う
など、事業の経営または管理に実質的に参画していることです。
出入国在留管理庁も、経営者について、事業運営に関する重要事項の決定、事業の執行等に従事していることが必要との考え方を示しています。
したがって、
- 会社は存在するがほとんど活動していない
- 実際の経営は別の人がすべて行っている
- 本人は経営業務ではなく現場作業だけを行っている
- 日本にほとんど滞在していない
といった場合には、現在も「経営・管理」に該当する活動を行っているのかという問題が生じます。
理由2|事業実態を確認できない
会社が登記上存在しているだけではなく、実際に事業を行っていることも重要です。
たとえば、
- 売上がほとんどない
- 取引先が確認できない
- 契約書や請求書がない
- Webサイト等に記載された事業と実際の事業が異なる
- 事務所の利用実態が確認できない
といった場合には、事業実態について説明を求められる可能性があります。
特に売上が少ない場合には、
「なぜ売上が少ないのか」
だけでなく、
「現在どのような営業活動を行い、今後どのように売上を増やしていくのか」
まで整理することが重要です。
売上が少ない場合の考え方については、経営管理ビザ更新で売上が少ない場合はどうなる?更新申請で確認されるポイントでも詳しく解説しています。
理由3|事業の継続性に問題がある
経営管理ビザ更新において、特に重要なのが事業の継続性です。
出入国在留管理庁は、事業の継続性について、単年度の赤字だけで判断するのではなく、直近2期の決算状況や貸借状況等を含めて判断する考え方を示しています。
特に確認したいのが、
- 売上総利益
- 欠損金
- 債務超過
です。
赤字だから直ちに不許可ではない
会社経営では、
- 創業時の先行投資
- 店舗開業
- 人材採用
- 設備投資
- 広告宣伝
- 新規事業への投資
などにより、一時的に赤字になることがあります。
そのため、単年度の赤字だけをもって直ちに事業継続性が否定されるわけではありません。
一方、
- 2期連続で売上総利益がない
- 債務超過が長期間続いている
- 売上が減少し続けている
- 資金繰りの見通しが立たない
といった場合には、事業継続性について慎重な確認が必要になります。
決算書の確認方法については、経営管理ビザ更新で決算書のどこを見られる?中小企業診断士が財務面を解説をご覧ください。
また、黒字の場合でも注意すべきポイントについては、経営管理ビザ更新で黒字なら安心?赤字ではなくても注意したい財務・事業実態のポイントで解説しています。
理由4|債務超過の改善見通しを説明できない
財務面で特に注意したいのが債務超過です。
債務超過とは、会社の負債が資産を上回り、貸借対照表上の純資産がマイナスとなっている状態です。
出入国在留管理庁の現在の運用では、直近期末で債務超過となっている場合、その継続期間や状況に応じて、事業継続性を慎重に判断する考え方が示されています。
たとえば、直近期では債務超過でも前期は債務超過ではなかった場合には、1年以内に債務超過を解消する具体的な改善見通しが重要となり、中小企業診断士や公認会計士等による評価書が求められるケースがあります。
債務超過の場合には、
- なぜ債務超過になったのか
- 今後どのように売上を増加させるのか
- どのように利益率を改善するのか
- 資金繰りを維持できるのか
- いつまでに債務超過を解消するのか
を具体的に整理する必要があります。
詳しくは、経営管理ビザ更新で債務超過・赤字の場合の「経営改善計画書」の書き方もあわせてご覧ください。
理由5|税金・社会保険等の義務を履行していない
2025年10月の制度改正以降、経営管理ビザの更新では、事業者としての義務履行もより明確に確認されるようになっています。
現在の更新申請用資料では、
- 雇用保険
- 労災保険
- 健康保険
- 厚生年金
- 法人税
- 法人住民税
- 法人事業税
- 消費税等
について、適用・加入・納付状況を確認する形式になっています。
出入国在留管理庁の更新用説明書でも、納期限が到来した税金や社会保険料等を納付していない場合には、その理由、手続状況、納付見込み等を記載することになっています。
また、一般的な在留期間更新のガイドラインでも、高額または長期間の税金・保険料の未納等は、更新判断における消極的要素となり得ることが示されています。
したがって、
「会社の決算は黒字だから、税金や社会保険は関係ない」
とは考えない方がよいでしょう。
更新前には、税理士や社会保険労務士等とも連携しながら、加入・申告・納付状況を確認することが重要です。
※税金・社会保険の未納については、次の記事で詳しく解説する予定です。
理由6|必要な許認可を取得せず事業を行っている
事業によっては、営業を行うために行政上の許認可が必要になります。
たとえば、
- 飲食店営業
- 旅館業
- 住宅宿泊事業
- 古物営業
- 建設業
- 宅地建物取引業
- 職業紹介事業
- 産業廃棄物関連事業
などです。
現在の経営管理ビザ更新書類でも、事業活動に必要な許認可の取得状況を確認することになっています。
特に、前回申請時から事業内容を変更している場合には、
「新しい事業に必要な許認可を取得しているか」
を確認する必要があります。
事業内容を変更した場合については、経営管理ビザ更新で事業内容が変わった場合の注意点|新規事業・業種変更をどう説明するかでも詳しく解説しています。
理由7|在留状況そのものに問題がある
経営管理ビザの更新では、会社の状況だけでなく、申請人本人のこれまでの在留状況も確認されます。
一般的な在留期間更新のガイドラインでは、
- 現在の在留資格に応じた活動を行っていたか
- 素行に問題がないか
- 納税義務等を履行しているか
- 入管法上必要な届出を行っているか
なども考慮事項とされています。
また、2026年6月に更新された経営管理ビザのFAQでは、正当な理由なく長期間出国している場合についても、更新審査上の消極的要素となり得ることが示されています。
日本法人の代表者であっても、
長期間日本を離れている場合には、本当に日本で会社の経営・管理を行っているのか
という点を説明する必要が生じることがあります。
理由8|新しい経営管理ビザの基準への対応見込みがない
2025年10月16日から、経営管理ビザの許可基準が改正されました。
主な改正内容として、
- 資本金等3,000万円以上
- 常勤職員の雇用
- 一定の日本語能力
- 経営者の学歴または経営管理経験
- 事業計画書の専門家確認
などがあります。
ただし、改正前から経営管理ビザで在留している方が、2028年10月16日までに更新申請をする場合、新基準を満たしていないことだけを理由に不許可になるわけではありません。
出入国在留管理庁は、この期間について、経営状況や今後新基準に適合する見込み等を踏まえて判断するとしています。
詳しくは、在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正についてをご確認ください。
一方、
「経過措置があるから2028年まで何もしなくてよい」
という意味でもありません。
今後の更新では、
- 資本金等3,000万円への対応
- 常勤職員の雇用
- 日本語能力
- 経営経験・学歴
- 今後の事業規模
などについて、早い段階から対応方針を検討しておくことが重要です。
資本金については、経営管理ビザ更新は資本金3,000万円未満だと不許可になる?既存在留者の更新ポイントを解説もあわせてご覧ください。
一つ問題があるだけで直ちに不許可になるとは限らない
ここまで、
- 経営活動
- 事業実態
- 財務状況
- 債務超過
- 税金・社会保険
- 許認可
- 在留状況
- 新基準
について説明しました。
ここで重要なのは、
これらのうち一つに問題があるからといって、必ず更新が不許可になるわけではない
ということです。
たとえば、
- 赤字だが十分な現預金がある
- 債務超過だが1年以内の改善見込みがある
- 売上は小さいが急速に拡大している
- 事業内容は変わったが、新事業ですでに売上が発生している
といったケースもあります。
重要なのは、
問題があるかどうかだけではなく、その原因と今後の見通しを客観的な資料で説明できるか
という点です。
追加資料を求められた場合は「何を確認されているか」を考える
更新申請後、入管から追加資料の提出を求められることがあります。
この場合には、指定された書類をただ提出するだけでなく、
「なぜこの資料を求められているのか」
を考えることが重要です。
たとえば、
決算書を求められた
→ 事業継続性を確認している
契約書・請求書を求められた
→ 事業実態を確認している
事業計画書を求められた
→ 今後の売上・収益見込みを確認している
評価書を求められた
→ 財務上の改善可能性を確認している
といったように、追加資料の背景にある確認事項を整理します。
詳しくは、経営管理ビザ更新で追加資料を求められた場合の対応方法|赤字・債務超過の場合も解説をご覧ください。
経営管理ビザ更新前のチェックリスト
更新申請前には、少なくとも次の項目を確認してみてください。
事業実態
- 現在も実際に事業を行っている
- 売上・取引実績を資料で説明できる
- 契約書・請求書等が整理されている
- 事務所・店舗の実態がある
- 必要な許認可を取得している
経営者本人
- 実際に会社の経営・管理を行っている
- 日本で継続的に経営活動を行っている
- 長期間の海外滞在等について説明ができる
- 入管法上必要な届出を行っている
財務
- 直近2期の決算書を確認した
- 売上総利益がある
- 欠損金の状況を把握している
- 債務超過の有無を確認している
- 最新の試算表を確認している
- 今後の資金繰りを説明できる
税金・社会保険
- 法人税等を適切に申告・納付している
- 社会保険の適用・加入状況を確認した
- 社会保険料を納付している
- 労働保険の手続きを確認している
新基準
- 資本金等3,000万円への対応方針を検討している
- 常勤職員の要件を確認している
- 日本語能力の要件を確認している
- 経営経験・学歴の要件を確認している
- 2028年10月16日までの対応スケジュールを検討している
中小企業診断士・行政書士に依頼するメリット
経営管理ビザの更新に不安がある場合、
「申請書を作成すること」だけでは解決しないケース
があります。
特に、
- 売上が少ない
- 赤字になっている
- 債務超過になっている
- 新規事業へ変更した
- 今後の売上計画が必要
- 改善見通し評価書を求められた
といった場合には、会社の経営状態そのものを整理する必要があります。
中小企業診断士は、
- 財務分析
- 経営改善
- 事業計画
- 売上計画
- 収支計画
- 資金計画
を扱う経営の専門家です。
行政書士は、在留資格をはじめとする行政手続の専門家です。
当事務所では双方の資格・実務経験を活かし、
「入管申請として何を説明すべきか」
と、
「会社経営として今後どのように改善すべきか」
の両面から対応します。
当事務所で対応できること
次のような場合にはご相談ください。
- 次回の経営管理ビザ更新に不安がある
- 売上が少ない
- 赤字決算になった
- 債務超過になった
- 前回申請時から事業内容が変わった
- 税金・社会保険について確認したい
- 入管から追加資料を求められた
- 経営改善計画書を作成したい
- 中小企業診断士による改善見通し評価書が必要
- 新基準への対応方法を整理したい
更新期限直前では対応できる方法が限られることもあります。
決算書や現在の事業状況に不安がある場合には、早めに確認しておくことをおすすめします。
ご依頼の流れ
1.お問い合わせ
現在の在留期限と、ご不安な点をお知らせください。
2.資料確認
前回申請資料、決算書、確定申告書、最新の試算表等を確認します。
3.課題の整理
事業実態、財務状況、納税・社会保険、新基準への対応状況等を確認します。
4.必要な対応・お見積り
通常の更新申請で対応できるのか、事業計画書や経営改善計画、評価書等が必要なのかを整理します。
5.書類作成
必要な資料を作成します。
6.内容確認・修正
申請内容と会社の実態・財務資料との整合性を確認します。
7.納品・申請
完成した書類を納品し、ご依頼内容に応じて更新申請まで対応します。
料金の目安
更新に関連して事業計画書の作成が必要となる場合は、
事業計画書作成:100,000円(税別)
を目安としています。
赤字・債務超過等により改善見通し評価書が必要となる場合は、
改善見通し評価書作成:100,000円(税別)
を目安としています。
更新申請そのものや追加資料対応については、状況を確認したうえで個別にお見積りします。
まとめ|不許可になるかではなく「問題を説明できるか」を早めに確認する
経営管理ビザの更新では、
「赤字だから不許可」
「売上が少ないから不許可」
「資本金が3,000万円ないから不許可」
と、一つの要素だけで判断できるものではありません。
更新前には、
- 現在も実際に経営・管理活動を行っているか
- 事業実態があるか
- 今後も事業を継続できるか
- 財務状態に問題がないか
- 税金・社会保険等の義務を履行しているか
- 必要な許認可を取得しているか
- 在留状況に問題がないか
- 新基準への対応見込みがあるか
を総合的に確認する必要があります。
そして、問題がある場合には、
「なぜその状態になったのか」
「現在どのように改善しているのか」
「今後どのように解決するのか」
を、数字と客観的な資料によって説明できる状態にしておくことが重要です。
更新期限の直前になって初めて問題に気付くのではなく、早めに決算書や事業状況を確認し、必要な対応を進めておくことをおすすめします。
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