
2026年8月31日、中小企業庁の中小企業向け支援サイト「ミラサポplus」で、令和9年度(2027年度)の「中小企業・小規模事業者関係予算等ポイント等」が公表されました。
令和9年度にどのような補助金・支援策が実施される可能性があるのか、気になっている中小企業経営者の方も多いのではないでしょうか。
今回公表された資料を見ると、今後の中小企業支援では、
- 省力化
- デジタル化・AI活用
- 新製品・新サービス開発
- 新市場への進出
- 成長投資
- 販路開拓
- 事業承継・M&A
といったテーマが引き続き重視される方向性が見えてきます。
一方、現在実施されている補助金が、そのまま同じ名称・同じ制度内容で令和9年度も続くとは限りません。
今回公表されたものはあくまで「概算要求」であり、今後の予算編成や国会審議を経て、最終的な予算や制度内容が決まります。
本記事では、ミラサポplus「中小企業・小規模事業者関係予算等ポイント等」をもとに、令和9年度の中小企業向け補助金・支援策について、現時点で注目しておきたいポイントを中小企業診断士・行政書士の視点から整理します。
まず注意|「概算要求=来年度の補助金決定」ではない
最初に押さえておきたいのが、「概算要求」という言葉です。
概算要求は、各省庁が翌年度に必要と考える予算を財務省へ要求する段階です。
したがって、今回資料に記載された補助金や予算額について、
「令和9年度にこの補助金が必ず実施される」
「補助上限額や補助率がこの内容で確定した」
という意味ではありません。
今後、
概算要求 → 政府予算案 → 国会審議・予算成立 → 制度設計 → 公募要領公開
という流れを経て、実際に利用できる制度が明らかになります。
ただし、概算要求を見ることで、国が来年度どの分野へ重点的に予算を配分しようとしているのかを早い段階で知ることができます。
設備投資や新事業を検討している企業にとっては、来年度の投資計画を考える際の重要な材料になります。
令和9年度概算要求で注目したいポイント
1.省力化・デジタル化・AI投資が引き続き重要テーマに
まず注目したいのが、省力化、デジタル化、AI活用への投資です。
現在、中小企業向けには、
- 省力化投資補助金
- デジタル化・AI導入補助金
などが実施されています。
ミラサポplusの補助金一覧でも、省力化投資補助金はIoT・ロボット等による人手不足解消、デジタル化・AI導入補助金は業務効率化や自動化を支援する制度として位置付けられています。
令和9年度概算要求では、これらの分野を「省力化・デジタル化・AI投資」という形で一体的に支援していく方向性が示されています。
現在、多くの中小企業が、
- 人手不足
- 採用難
- 人件費上昇
- 属人化
- 生産能力不足
といった課題を抱えています。
そのため、単純に人員を増やすのではなく、
「設備・システム・AIを活用して、少ない人数でも生産性を高める」
という投資は、今後も重要な政策テーマになると考えられます。
製造業だけでなく、建設業、物流業、飲食・サービス業など幅広い業種で活用の可能性があります。
2.「新事業進出・ものづくり商業サービス」の支援も継続方向
もう一つ大きなポイントが、新製品・新サービス開発や新市場進出に対する支援です。
令和8年度からは、それまでの「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」の流れを再編し、
「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」
が実施されています。
現在の制度では、
- 技術的革新性のある製品・サービス開発
- 新市場・高付加価値事業への進出
- 海外市場開拓
- これらに必要となる機械装置・システム等への投資
などが支援対象となっています。
制度の概要については、ミラサポplus「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」でも紹介されています。
令和9年度概算要求では、この「新事業進出・ものづくり商業サービス補助事業」に2,200億円の要求が示されており、今後も中小企業の新事業・高付加価値化を支援していく方向性が読み取れます。
設備投資を検討している中小企業にとっては、引き続き注目度の高い制度になりそうです。
3.単なる設備導入ではなく「成長」がより重視される可能性
今回の概算要求で特に注目したいのが、補助金と企業の「成長目標」がこれまで以上に結び付いてきている点です。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助事業については、
「売上高10億円を目指す宣言」を原則として要件化する
という方向性が示されています。
具体的な対象企業、宣言方法、例外の取扱いなどは、今後の制度設計や公募要領を確認する必要があります。
ただ、政策の方向性としては非常に重要です。
これまでも補助金申請では、
- 付加価値額
- 労働生産性
- 賃上げ
- 売上増加
- 新市場開拓
などが重視されてきました。
今後はさらに、
「この設備を導入したら何が改善するか」だけでなく、「この投資によって会社そのものをどこまで成長させるのか」
を問われる傾向が強くなる可能性があります。
これは事業計画書の作り方にも大きく影響します。
4.小規模事業者持続化補助金も「成長志向」がキーワードに
小規模事業者向けの代表的な制度である「小規模事業者持続化補助金」についても、継続する方向性が示されています。
現在の持続化補助金は、小規模事業者が自ら経営計画を策定し、商工会・商工会議所の支援を受けながら行う販路開拓等を支援する制度です。
詳しくは、ミラサポplus「小規模事業者持続化補助金」をご参照ください。
令和9年度概算要求では、
「例えば売上高1億円を目指すなど、売上規模を拡大する成長志向の経営計画」
という考え方も示されています。
すべての小規模事業者に売上高1億円を求めるという意味ではありません。
しかし、従来の
「チラシを作りたい」
「ホームページを作りたい」
「店舗を改装したい」
という経費中心の発想だけではなく、
「その販路開拓によって会社をどのように成長させるのか」
という経営計画とのつながりが、より重要になる可能性があります。
5.成長加速化補助金など「成長企業」への支援も継続
成長意欲の高い中小企業への大型投資支援も重要な政策テーマです。
現在実施されている「中小企業成長加速化補助金」は、「100億宣言」を行い、売上高100億円を目指す中小企業の大型設備投資等を支援する制度です。
現在の制度では補助上限額5億円、補助率1/2で、投資額1億円以上などの要件があります。
制度の考え方については、ミラサポplus「中小企業成長加速化補助金」でも解説されています。
令和9年度概算要求でも、成長加速化補助金をはじめとする成長志向企業への支援が盛り込まれています。
すべての中小企業が売上100億円を目指す必要はありません。
一方で、
「維持する企業」だけではなく、「積極的に成長しようとする企業へ重点的に支援する」
という政策の方向性は、今後の中小企業施策を考えるうえで重要なポイントだと考えます。
6.事業承継・M&A、販路開拓なども引き続き支援
今回の概算要求では、設備投資だけでなく、
- 小規模事業者の販路開拓
- 事業承継・M&A
- 経営改善・事業再生
- 資金繰り
- 経営相談
など、幅広い中小企業支援策も盛り込まれています。
特に後継者不足が深刻化する中、M&Aや事業承継については、今後も重要な政策テーマになると考えられます。
補助金だけを見るのではなく、自社の経営課題に応じて、
設備投資・金融支援・経営改善・事業承継などを組み合わせて考える
ことが重要です。
令和9年度の補助金活用に向けて、今から準備できること
概算要求の段階では、まだ公募要領はありません。
そのため、
「補助率は何%か」
「補助上限はいくらか」
「どの設備が対象になるか」
といった詳細を確定的に判断することはできません。
一方で、設備投資や新事業を予定している会社であれば、今から準備できることはあります。
1.来年度に予定している設備投資を整理する
まず、
- どの設備を導入したいのか
- 概算金額はいくらか
- いつ導入したいのか
- どの業務に使用するのか
を整理しておきます。
特に大型設備は、見積取得から納期確認まで時間がかかることがあります。
補助金公募が始まってから検討を始めるのではなく、早めに設備投資計画を作っておくことが重要です。
2.「なぜその設備が必要なのか」を整理する
補助金申請で重要なのは、設備そのものではありません。
たとえば、
「新しい加工機を買いたい」
ではなく、
- 現在どの工程がボトルネックなのか
- 何時間かかっているのか
- 何人必要なのか
- 設備導入によってどう改善するのか
- 新しい製品やサービスを提供できるのか
まで整理する必要があります。
設備投資と経営課題を結びつけておくことが重要です。
3.投資後の売上・利益を考える
今後の補助金では、企業の「成長」がこれまで以上に重要になる可能性があります。
そのため、
- 生産能力が何%増えるのか
- 作業時間が何時間減るのか
- 新規顧客を何社獲得するのか
- 売上がいくら増えるのか
- 粗利益がどの程度改善するのか
などを考えておくとよいでしょう。
単に補助金を使って設備を購入するのではなく、
「投資→生産性向上→売上・利益増加→賃上げ」
までを一つのストーリーとして整理することが重要です。
4.補助金ありきで投資を決めない
補助金は原則として返済不要ですが、申請すれば必ず採択されるものではありません。
また、採択されたとしても、補助金は原則後払いです。
そのため、
「補助金が出なければ実施できない計画」
ではなく、
自社の経営戦略として必要な投資があり、その一部に補助金を活用する
という考え方が基本です。
補助金の基本的な仕組みについては、ミラサポplus「補助金とは」でも詳しく説明されています。
中小企業診断士・行政書士として今回の概算要求をどう見るか
今回の概算要求を見て、個人的に特に注目しているのは、
「補助金を活用した単発の設備投資」から、「企業の成長戦略に基づく投資」へと、さらに政策の重点が移っていること
です。
省力化、AI、新事業進出、高付加価値化、売上規模拡大など、個々の制度には違いがあります。
しかし共通しているのは、
「その投資によって企業の生産性と付加価値を高め、継続的な賃上げや成長につなげる」
という考え方です。
そのため今後の補助金申請では、
「この設備が欲しいから補助金を探す」
という発想だけでなく、
「今後3年、5年で会社をどう変えていくのか。そのためにどの投資が必要なのか」
という事業計画を先に考えることが、より重要になると考えています。
当事務所で対応できること
野口コンサルタント事務所では、中小企業診断士・行政書士として、中小企業の設備投資や新事業に関する補助金申請を支援しています。
主に、
- ものづくり・新事業系の補助金
- 省力化投資に関する補助金
- 設備投資を伴う各種補助金・助成金
- 新事業・高付加価値化に関する事業計画
- 生産性向上、賃上げを含む数値計画
などについて、事業者様へのヒアリングから事業計画書の作成まで対応しています。
補助金を申請することだけを目的とするのではなく、設備投資や新事業が会社の成長にどのようにつながるのかを整理したうえで、事業計画としてまとめることを重視しています。
補助金申請支援については、補助金・助成金申請支援サービスもご覧ください。
まとめ|令和9年度も「省力化・AI・新事業・成長」が重要テーマに
令和9年度概算要求を見ると、中小企業向け支援策では、
- 省力化
- デジタル化・AI
- 新製品・新サービス
- 新市場進出
- 販路開拓
- 成長投資
- 事業承継・M&A
などが引き続き重要なテーマとなっています。
特に注目したいのは、単なる設備導入ではなく、企業の成長目標と設備投資を結びつける方向性が強まっていることです。
なお、現時点ではあくまで概算要求段階です。
実際の補助金制度、補助上限額、補助率、対象経費、申請要件などについては、今後公表される政府予算案や各補助金の公募要領を確認する必要があります。
令和9年度に設備投資や新事業を予定している企業は、制度が確定するのを待つだけでなく、
自社の経営課題、投資内容、投資後の売上・利益・生産性向上について、今から整理を始めておくこと
をおすすめします。
今後、令和9年度の予算や各補助金の詳細が公表され次第、当サイトでも随時情報を更新していきます。
