
経営管理ビザの更新を控えている方から、
「法人税をまだ納付できていませんが、更新できますか?」
「社会保険料を滞納しています」
「会社を設立してから社会保険に加入していません」
「分納している税金が残っていますが、更新に影響しますか?」
といったご相談を受けることがあります。
結論からいうと、税金や社会保険料に未納があるからといって、それだけで経営管理ビザの更新が必ず不許可になるわけではありません。
しかし、現在の経営管理ビザ更新では、税金、社会保険、労働保険などの公租公課の履行状況が明確な確認項目となっています。
出入国在留管理庁が公表している「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」でも、納税義務を履行していない場合は消極的な要素として評価され、高額または長期間の未納など、悪質と判断される場合には特に注意が必要とされています。
また、経営管理ビザについては、更新時に会社の税金・社会保険・労働保険等の加入・納付状況を証する資料の提出が求められています。
そのため、
「決算は黒字だから大丈夫」
というだけではなく、更新前に公租公課の状況も確認しておく必要があります。
本記事では、経営管理ビザ更新時に税金・社会保険の未納がある場合の考え方と、申請前に確認しておきたいポイントについて、中小企業診断士・行政書士の視点から解説します。
経営管理ビザ更新では税金・社会保険の状況も確認される
2025年10月16日の「経営・管理」の基準改正後、在留期間更新許可申請では、所属機関における公租公課の履行状況を明らかにする資料が提出書類として明示されています。
法人の場合には、該当するものについて、
- 労働保険への加入状況・納付状況
- 社会保険への加入状況・納付状況
- 源泉所得税及び復興特別所得税
- 法人税
- 消費税及び地方消費税
- 法人住民税
- 法人事業税
などの状況が確認されます。
さらに、申請人本人についても、住民税の課税証明書・納税証明書等が更新申請資料となっています。
つまり、経営管理ビザの更新では、
「会社の税金」
と、
「経営者本人の納税状況」
の双方を確認しておく必要があります。
「どれか一つ提出すればよい」わけではない
ここは注意したいポイントです。
出入国在留管理庁のFAQでは、公租公課について提出資料が複数列挙されていることに関し、納付が義務づけられているものはすべて提出が必要と明示されています。
たとえば、
「法人税の納税証明書だけ提出すればよい」
「社会保険だけ確認すればよい」
というものではありません。
会社によって納付義務のある税目や保険は異なりますので、自社に何が適用されるのかを確認したうえで資料を準備します。
税金に未納があると更新できない?
税金に未納があるからといって、未納額の大小や期間、理由を問わず一律に更新不許可になる、という基準が公表されているわけではありません。
一方、出入国在留管理庁の更新許可ガイドラインでは、納税義務を履行していない場合は消極的要素として評価されるとされています。
さらに、
- 高額の未納
- 長期間の未納
などがあり、悪質と判断される場合についても明示されています。
したがって、
「多少未納があっても関係ない」
と考えるべきではありません。
更新前に未納が判明した場合には、
- 何の税金か
- 未納額はいくらか
- いつから未納なのか
- なぜ未納になったのか
- 現在どのような納付手続きを行っているか
- いつまでに納付できる見込みか
を確認する必要があります。
法人で確認される主な税金
法人の経営管理ビザ更新では、事業所として納付すべき税金について、現在の出入国在留管理庁FAQで次の税目が示されています。
国税
- 源泉所得税及び復興特別所得税
- 法人税
- 消費税及び地方消費税
地方税
- 法人住民税(都道府県民税・市区町村民税)
- 法人事業税
もちろん、会社の状況によって課税・納付義務の有無は異なります。
たとえば、消費税の納税義務がない事業年度もあります。
重要なのは、
自社に納付義務がある税金について、適切に申告・納付しているか
という点です。
赤字会社でも税金がゼロとは限らない
「会社が赤字なので、税金はありません」
と思っている方もいますが、必ずしもそうとは限りません。
法人税は所得を基礎として計算されますが、赤字であっても法人住民税の均等割が発生する場合があります。
また、
- 従業員等から預かった源泉所得税
- 消費税
- その他の公租公課
については、会社の最終利益が赤字か黒字かとは別に納付義務が生じる場合があります。
したがって、経営管理ビザ更新前には、
「決算が赤字だから税金は問題ないだろう」
と自己判断せず、税理士等に現在の申告・納付状況を確認することをおすすめします。
財務面そのものについては、
経営管理ビザ更新で決算書のどこを見られる?中小企業診断士が財務面を解説
でも詳しく解説しています。
社会保険に未納がある場合はどうなる?
税金だけでなく、社会保険料の納付状況も確認対象です。
現在の経営管理ビザ更新資料では、社会保険について、
- 加入状況
- 保険料の納付状況
を証する資料が求められています。
また、一般的な在留期間更新のガイドラインでも、国民健康保険料など法令上納付義務のあるものについて、高額または長期間の未納等がある場合には、悪質なものについて消極的に取り扱う考え方が示されています。
そのため社会保険についても、
「加入しているから問題ない」
ではなく、
「加入し、適切に保険料を納付しているか」
まで確認する必要があります。
法人なのに社会保険へ加入していない場合は要注意
未納とあわせて注意したいのが、そもそも社会保険に加入していないケースです。
日本年金機構によると、株式会社などの法人事業所は、事業主のみの場合を含め、原則として健康保険・厚生年金保険の適用事業所となります。
そのため、
「従業員がいないので加入していなかった」
「代表者一人だけなので社会保険は不要だと思っていた」
という場合には注意が必要です。
また、2025年10月改正後の経営管理ビザFAQでも、社会保険、雇用保険、労災保険等について、加入状況や納付状況に問題がある場合は審査上の消極的要素となり、更新が認められない事例もあると案内されています。
社会保険に加入義務があるにもかかわらず未加入となっている場合には、単なる保険料の未納とは別に、
「本来必要な手続きを行っていなかった」
という問題があります。
更新直前まで放置せず、まず年金事務所等に確認することが重要です。
労働保険も確認する
従業員を雇用している場合には、労働保険についても確認します。
労働保険とは、
- 労災保険
- 雇用保険
の総称です。
厚生労働省は、法人・個人事業を問わず、労働者を一人でも雇用している場合には、原則として労働保険への加入手続が必要と案内しています。
経営管理ビザの更新でも、労働保険への加入状況・納付状況を示す資料が提出対象となっています。
常勤職員を雇用している会社では、
社会保険だけでなく、労働保険の手続も確認する
必要があります。
「分納中なら大丈夫」とは限らない
資金繰りの問題から、
「税務署と相談して分割で納付しています」
「社会保険料を分納しています」
というケースもあります。
この場合、
分納しているから更新上まったく問題がない、と一律には言えません。
一方で、
- 何も対応せず長期間放置している
- 関係機関と相談しながら納付を進めている
のでは状況が異なります。
未納がある場合には、税務署、自治体、年金事務所等へ相談し、法令上の猶予や分割納付等の手続きを行っているのであれば、
- 手続を行ったことが分かる資料
- 現在の未納額
- これまでの納付実績
- 今後の納付予定
を整理しておくことが重要です。
ただし、正式な納付計画があること自体が更新許可を保証するものではありません。
個別の状況を踏まえて申請資料を整理する必要があります。
更新直前に未納へ気付いた場合はどうする?
更新直前になって未納に気付いた場合でも、まず状況を確認します。
重要なのは、
事実を隠したり、資料を提出しなかったりすることではありません。
確認したいのは、
- 未納額
- 未納期間
- 発生原因
- 現在の支払能力
- 納付予定
- 関係機関への相談状況
です。
納付可能であれば、早急に納付手続きを進めます。
すぐに全額納付できない場合には、税務署、自治体、年金事務所等に相談し、どのような手続が可能なのか確認します。
そのうえで更新申請では、必要に応じて、
「なぜ未納が発生したのか」
「現在どのような対応を行っているのか」
「今後どのように納付するのか」
を説明できるようにします。
会社の資金繰りに問題がある場合は財務面も確認する
税金や社会保険料を払えない原因が、
単なる手続漏れではなく、会社の資金不足
というケースもあります。
この場合、問題は公租公課の未納だけではありません。
たとえば、
- 売上が減少している
- 営業赤字が続いている
- 現預金が少ない
- 借入返済が重い
- 債務超過になっている
といった状況があれば、事業継続性そのものについても確認する必要があります。
未納分だけを何とか納付しても、翌月以降の税金・社会保険料を再び支払えなければ、根本的な解決にはなりません。
そのため、
未納が資金繰り悪化の結果なのであれば、会社の収支・資金計画まで見直すこと
が重要です。
売上が少ないケースについては、
経営管理ビザ更新で売上が少ない場合はどうなる?更新申請で確認されるポイント
債務超過については、
経営管理ビザ更新で債務超過・赤字の場合の「経営改善計画書」の書き方
もあわせてご覧ください。
経営管理ビザの新基準でも納付状況は重要
2025年10月16日から、在留資格「経営・管理」の許可基準が改正されています。
改正前から経営管理ビザで在留している方には経過的な取扱いがありますが、出入国在留管理庁のFAQでは、改正後の基準に適合していない場合の更新判断においても、
経営状況が良好であることや、法人税等の納付義務を適切に履行していること
が明示されています。
つまり今後は、
税金・社会保険等の適切な履行は、単なるバックオフィス上の問題ではなく、経営管理ビザを維持していくうえでも重要な経営課題
と考えた方がよいでしょう。
資本金等3,000万円の新基準については、
経営管理ビザ更新は資本金3,000万円未満だと不許可になる?既存在留者の更新ポイントを解説
でも詳しく解説しています。
「未納」と「未加入」は分けて考える
税金・社会保険について相談を受ける際には、大きく二つの問題に分けて考えます。
未納
本来必要な申告や加入手続は行っているものの、納期限までに税金・保険料を支払えていない状態です。
未加入・未手続
本来加入・申告等が必要であるにもかかわらず、その手続自体を行っていない状態です。
特に社会保険や労働保険では、
「保険料を払っていない」のか、「そもそも加入していない」のか
によって対応が異なります。
最初に現状を正確に把握することが重要です。
更新前に確認したいチェックリスト
経営管理ビザ更新前には、会社と経営者本人について、少なくとも次の点を確認しておきたいところです。
- 法人税等の申告・納付状況
- 源泉所得税の納付状況
- 消費税の納付義務と納付状況
- 法人住民税・法人事業税の納付状況
- 経営者本人の住民税の納付状況
- 健康保険・厚生年金の加入状況
- 社会保険料の納付状況
- 労働保険の加入・納付状況
- 未納がある場合の金額と期間
- 未納が発生した理由
- 税務署・自治体・年金事務所等への相談状況
- 今後の納付計画
- 未納の原因となった資金繰り上の問題がないか
更新期限の直前では対応できる方法が限られる場合があります。
未納や未加入が気になる場合には、できるだけ早めに確認することをおすすめします。
中小企業診断士・行政書士に依頼するメリット
税金や社会保険に未納がある場合、
「未納をどう説明するか」だけを考えればよいとは限りません。
特に、未納の原因が会社の資金繰りにある場合には、
- なぜ資金不足になったのか
- 今後売上が回復するのか
- 利益を確保できるのか
- 公租公課を継続して納付できるのか
- 事業自体を継続できるのか
まで整理する必要があります。
中小企業診断士は、財務分析、資金繰り、経営改善、事業計画を扱う経営の専門家です。
行政書士は、在留資格をはじめとする行政手続の専門家です。
当事務所では双方の視点から、
「更新申請として何を説明する必要があるか」
だけでなく、
「会社として今後どのように正常な納付を継続できる状態にするか」
まで整理します。
なお、税額計算や税務申告そのものは税理士、社会保険手続等については必要に応じて社会保険労務士等の専門家と連携しながら進めます。
当事務所で対応できること
当事務所では、経営管理ビザ更新に関して、
- 税金・社会保険等の状況を踏まえた更新申請の整理
- 決算書・試算表の確認
- 資金繰り状況の確認
- 今後の事業計画・収支計画の作成
- 赤字・債務超過時の経営改善計画作成
- 改善見通し評価書の作成
- 入管から追加資料を求められた場合の対応
などに対応しています。
経営管理ビザ更新全体で確認すべきポイントについては、
経営管理ビザ更新が不許可になる主な理由|更新前に確認したいポイント
もあわせてご覧ください。
ご依頼の流れ
1.お問い合わせ
現在の在留期限と、税金・社会保険等について気になっている点をお知らせください。
2.資料確認
決算書、確定申告書、納税証明書、社会保険関係資料等を確認します。
3.現状整理
未納・未加入の有無、金額、期間、発生原因、現在の対応状況等を整理します。
4.必要な対応を確認
税務・社会保険上の手続が必要な場合には、税理士、社会保険労務士、税務署、年金事務所等への確認も含めて整理します。
5.更新申請資料の作成
必要に応じて理由説明、事業計画、収支計画、経営改善計画等を作成します。
6.内容確認・修正
申請内容と公租公課・財務資料との整合性を確認します。
7.納品・申請
完成した書類を納品し、ご依頼内容に応じて更新申請まで対応します。
料金の目安
事業計画書の作成が必要となる場合は、
事業計画書作成:100,000円(税別)
を目安としています。
赤字・債務超過等により改善見通し評価書が必要となる場合は、
改善見通し評価書作成:100,000円(税別)
を目安としています。
更新申請そのものや追加資料対応については、状況を確認したうえで個別にお見積りします。
まとめ|未納がある場合は放置せず、まず状況を整理する
経営管理ビザの更新では、税金、社会保険、労働保険などの公租公課の履行状況が確認されます。
未納があるからといって、
それだけで必ず更新不許可になるわけではありません。
一方で、高額または長期間の未納や、加入義務があるにもかかわらず社会保険等へ加入していない状態などは、更新審査において重要な問題となり得ます。
未納・未加入が判明した場合には、
「更新まで隠しておく」のではなく、
- 何が未納なのか
- いくら未納なのか
- なぜ発生したのか
- 現在どのような対応をしているのか
- 今後どのように解消するのか
を早い段階で整理することが重要です。
また、未納の原因が会社の資金不足にある場合には、税金や社会保険だけでなく、事業の収益性や資金繰りそのものを改善する必要があります。
更新期限が近づいてから慌てて対応するのではなく、決算書、公租公課、社会保険の状況を早めに確認しておくことをおすすめします。
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