従業員持株制度

従業員持株制度

先日、従業員持株制度について調べる機会があったので、この制度について少し書いてみたいと思います。
(ブログは方針転換!分野に拘らず、気ままに書いていくことにしました^^; )

従業員持株制度とは?

従業員持株制度とは、持株会に加入する従業員が、毎月一定の金額を拠出し、共同で株式を買い付けていく制度です。実際には、会社が従業員の給与から天引きして拠出しています。上場企業では9割以上が導入していると言われ、未上場企業でも導入する例が増えてきています。

私が勤めていた会社でも持株会がありましたが、当時はあまり興味もなかったので、どんなものかよく知りませんでした。ただ、古くから勤めていて持株会に加入していた先輩の中には、「儲かったよ~」と言ってた人もいました。

中小企業ではどういう目的で導入しているの?

中小企業の場合、経営者の相続税対策で導入を検討する会社が多いです。
「従業員の貢献意欲を高める」とか「福利厚生として」等も目的としてありますが、最初のきっかけとしては相続税対策で検討を始める会社が多いようです。

中小企業の場合、経営者=筆頭株主というケースが多く、会社規模が大きくなるにつれて相続税が気になってきます。特に、経営者が高齢になってきて事業承継を意識し始めた段階で、相続については大きな関心ごとになってくるのではないでしょうか。

しかし、市場性の無い中小企業の株式を売却するのは困難ですし、第三者に売却するのは経営権の上で好ましくありません。
「経営権は経営者のもとに保ったまま、相続財産を減らせないかな~?」という場合に有効な制度となります。
経営権に影響のない範囲で株式を従業員持ち株会に贈与あるいは譲渡することで、株式を社外流出させずに、相続財産を減らすことができるわけです。

従業員持株制度のメリット・デメリットは?

従業員持株制度には、会社側・従業員側のそれぞれの立場で、メリット・デメリットがあります。
しかし大前提として、従業員にとっては株式投資に他ならず、リスクが伴います。メリットだけを謳うことなく、リスクをしっかり説明し納得した従業員だけを対象に、加入を促していく必要があります。また、配当に関することや退会時の株式の買取価額についてなど、従業員が納得できる制度設計にも留意する必要があります。

会社側のメリット

  1. 経営者の相続財産を減らすことができる
    前述のとおりです。
  2. 株主構成が安定し、株主による経営への干渉や、敵対的買収が防止できる
    従業員が株主となりますが、議決権の行使は実質的には持株会の理事長が行います。そしてその理事長は多くの場合は会社側が任命しますので、経営上の問題には発展しづらいです。譲渡する株式に議決権制限を付与することもできます。
  3. 新たな資本調達の原資となる
  4. 従業員の貢献意欲を高めることができる
    当然に利益は株主である従業員に配当されます。会社の業績が上がれば上がるほど、従業員の資産形成に寄与します。会社業績と従業員への配当がリンクすることで、会社に対する貢献意欲が高まると期待されます。

会社側のデメリット

  1. 持株会制度や、会社経営に関して、従業員と摩擦が生じる可能性がある
    いくら経営権は社長にあると言っても、業績が悪くなれば従業員は損をする可能性があります。そうなれば、不満を漏らす従業員が出てきたり、経営者の指示に従わない従業員が出てくることもあるかもしれません。
  2. 景気や会社の業績次第で、従業員の士気が大きく変化する可能性がある
    メリットの裏返しです。
  3. 事務の手間が増える
    導入後は、奨励金の支給や給与天引き、決算時の配当など、持株制度を運用していくために毎月の事務作業が必要になります。その手間に時間を省ける余力があるのか、業務を任せられる知識のある人材がいるのかなどが問題になります。

従業員側のメリット

  1. 会社業績と比例した資産形成が可能
    従業員にとっては、自分たちが頑張って会社の利益が上がれば、給与以上の見返りがあります。
  2. 奨励金の存在
    企業が持株制度を導入する際には、奨励金制度を導入することが多いです。毎月の積立額(株式購入額)の3~10%程度が支給されています。従業員の持株会への参加率を高めるとともに、従業員の資産形成に寄与しようという制度です。
  3. 投資未経験でも気軽に始められる
    基本的には、会社側や持株会が事務処理はすべてやってくれます。

従業員側のデメリット

  1. 会社業績に資産リスクが集中する
    毎月の収入(フロー)も貯蓄(ストック)の両面で会社への依存度が高くなります。最悪、会社が倒産した場合には資産の多くを失うことになります。
  2. 売却が容易ではない
    売却したい場合には、持株会を退会し株式を買い取ってもらうことになります。しかし、持株会を退会して株式を売却することは、制度的にも心理的にも容易ではありません。まず制度面では、どのような制度設計にするかにもよりますが、買取価額が規約で決めた固定額になっていたり、売却は一定の単元ごとにしかできなくなっていたりすることがあります。また心理面では、持株会に加入することが会社に対する忠誠心だというような社風だと、売却は難しくなります。
    さらには、会社の機密情報等を知ったうえでの売却は当然にインサイダーの対象にもなりますので、慎重にならざるを得ません。。

中小企業でも従業員持ち株会は導入すべき?

一概にYESともNOとも言えません。メリットとデメリットが、会社側・従業員側で様々だからです。

ただ、この制度について調べてみて、私なりに「こんな会社なら導入を検討しても良いのでは?」というポイントを上げてみました。1つでも当てはまるならば、検討の余地ありです。

  1. 将来的なIPO(株式上場)を視野に入れている
    一般的に、株式上場されると株価は高くなります。従業員にとっては大きなメリットです。株式上場という大きな目標を、会社と従業員が共有することで、社内の統一感・一体感を強力に高めることができます。
  2. 導入後の制度運用を行っていく体力(ヒト・モノ・カネ)がある
    導入後の事務処理を行う方法は2つです。1つは社内で事務局を作って行う方法。もう1つは証券会社等に委託する方法。前者の場合は社内で事務処理を行う時間的な余裕や人材が必要です。後者の場合は、会社としては楽ですがコストが発生します。いずれにせよ、制度を維持していくためのヒト・モノ・カネが必要です。
  3. 社内の風通しが良い
    導入後のトラブルなどを避けるためにも、デメリットやリスクをしっかりと従業員に理解させたうえで加入させる必要があります。社内の風通しが悪いと、特にネガティブな情報は従業員に行きわたらず、後になって言った聞いてないのトラブルになりかねません。

単に事業承継・相続税対策というだけで導入するのは好ましくありません。
会社側のメリットだけを考えて半ば強引に始めても、トラブルのもとになるだけです。そもそも、従業員にとってメリットがなければ持株会に参加する従業員も集まりません。

持株会導入を考えるきっかけとして事業承継・相続税対策というのは、経営者として当然だと思います。そのうえで、従業員にどのようなメリットを享受できるかも具体的に設計し、Win-Winの制度に出来るのであれば、検討しても良いのではないでしょうか。

どうやって導入するの?

おおまかな流れは以下になります。

  1. 設立の準備
    ・設立事務を担当する担当者や部署の決定
    ・理事長等、持株会理事会役員候補者の選定
    ・規約の原案作成
    など
  2. 設立の手続き
    ・発起人会等の開催
    ・会社、持株会間での契約の締結
    など
  3. 入会者の募集
    ・従業員への説明会の実施
    ・給与控除の準備
    など

どうやって運用するの?

証券会社に事務処理を委託する場合には、毎月の運用は証券会社がやってくれます。

自社で事務処理をやっていく場合には、以下のような業務があります。

  • 入会の受付
  • 会員台帳の管理
  • 積立金や奨励金の残高管理
  • 給与天引き
  • 毎年1回、会員ごとに計算書を作成
  • 配当金の支給
  • 退会時の処理

おわりに

従業員持株会を導入する際には、目的を明確にすることが肝要です。もちろん相続財産の圧縮などのメリットも大きなものです。
しかし、導入することで社内にどのような効果をもたらし、どうやって会社の成長をドライブさせていくのか、経営戦略の中での位置づけをはっきりさせると良いと思います。